わかりませんと言うのか。
 豊平は両手をひらひらとあげて笑う。


「ほら、偉大な先生様が見てるぜぇ? いいのかよ上位に逆らって」


 陽那は少し黙って、豊平から手を離した。

 いちるからカッターを奪い取った陽那はそれを逆手に持つ。





 カッターを、自分の手首に勢いよく突き立てた。



 赤色の液体が彼の傷から飛び出して。
 いちるの顔にわずかに飛んだ。
 彼女は恐怖や罪悪感が混ざったような表情で陽那を見ていた。

 私の息は詰まって、ひゅうと音を鳴らす。


 こんな異常な出来事を前にしたって、悲鳴も何も起こらないような異常な空間。

 感覚が、おかしくなりそうだ。



「……っ。ほら、これでいいんだろクソ野郎」
「いやいや、すげぇな。そのダイナミック自傷行為には恐れ入ったわ」



 教室に豊平1人の乾いた拍手が響く。




[11/17]

[*prev] [next#]
[mokuzi]
[しおりを挟む]
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -