Yamato-3
『何、ですかこれ……』
壁一面にぎっしりと綺麗な花が装飾されている。
ナイターのライトに照らされてより幻想的で綺麗に見えた。
造花じゃないんだ、手入れ大変そう。
スタート、と書かれた看板を指差す大和さん。
「巨大迷路だよ、今のテーマは花なんだと。先にゴールした方が勝ちな、はいっ!よーいどん!!」
私の手を離してスタートへと走り出した。
えっ、ずるい!
慌てて追いかけるように走る。
中も沢山の花と草。
彼の姿はもう見えなくなっていた。
『競争!』
となれば、負けられない!
その迷路は複雑で、視界も悪い。
ここはどこだ。
手探りで歩いていくと、広い場所についた。
地面にはゴールと記されている。
『ゴール!勝った!』
周りを見ても大和さんの姿はない。
まだ迷っているのだろう。
ふふふ、私はとっくに着きましたよ。
悔しがる表情を拝んであげましょう!
後ろをくると振り返り迷路内を眺めた。
「あーもしもしお嬢さん?」
私が悔しがることになるなんて……
大和さんは出口に設置してある展望台のようなところにいたのだ。
ひょこりと上から見下されている。
「到着おめでとー、勝者にはプレゼントがありまーす」
私勝ってなくない?
何か、勝ったことにしてくれるようなので、優しい先輩の恩恵に預かりましょう。
大和さんはニンと無邪気に笑って下、つまり私のいる場所、の近くを指差した。
そこには元々設置されていたテーブル、上に何かが置いてあった。
「そこに箱と封筒があります。お好きな方をお選びくださいな」
『えーと、じゃあ……』
若干A4サイズの封筒がなんなのか気になる。
しかしここは、箱だ。
なんかいいもの入ってそうだ、封筒よりはね。
『こっち!』
「お目が高い!」
からりと大和さんは笑った。
マイペースに降りてきた大和さんが箱を手に取った。
小さなサイズの箱から出てきたのは、小さな赤のケース。
というか、これは……
「……俺と、結婚してくれませんか?」
ケースの中に入っていたのは、シルバーリングだった。
綺麗なリングは光に照らされてきらりと輝いた。
『はい……っ!』
「ほぅら、泣かせた」
ふ、と彼は笑う。
泣かずにいられるものか。
もちろん悲し涙じゃない、嬉し涙だ。
「あー、これもやるよ」
がさり、と手にとって見せてきたのは先ほどの茶色の封筒。
『結局、どっちもくれるんですね』
「卒業祝い、的な?」
的な?って適当だなぁ……
封筒にはパンフレットのようなものが詰まっている。
出し辛い。
封筒をひっくり返して出そうとすると、小さいものがするりと封筒がら逃げ出した。
ちゃり、と音を立てて地面に落ちる。
『……鍵?』
「まぁ、まだ、一軒家とか無理だけど」
『大和さんの家の……鍵?』
「違うよ」
じゃあどこの。
私を見て大和さんが悪戯に笑った。
「俺達、の家」
そういって、また笑う。
『会長』
「なんだ突然、懐かしいな」
『白鳥先輩』
「距離感な」
『大和さん』
「はいなんでしょう?」
『私をもらって、くれますか?』
私がそういうと「喜んで」と大和さんはまた優しく笑った。
*Afterstory Yamato fin*
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