Yamato-2
発進した車。
遅いわけではないが丁寧な運転。
しばらく世間話をしながらゆったりとした時間を過ごした。
家に到着。
大和さんが「おじゃまします」と言って家にあがる。
「ただいまでいいのよー」
お母さんが嬉しそうに笑う。
大和さんも「じゃあ、ただいま」だなんて笑った。
「ここはお前の家じゃねぇぞじじぃ!」
「お兄さんだろお兄さん……あ、秀樹ぃ、お前これ好きだったろ」
大和さんが鞄から箱を取り出した。
秀樹が大好きなスカイレンジャーという戦隊ヒーローのレッドの人形らしい。
「レッドだ!」
「かっこいいよなーこれゲーセンで取ったわー、ほれ、やる」
「さんきゅー!」
物で釣った。大人って汚い。
「スカイレンジャーごっこしよう!じじぃ怪獣!ねーちゃんピンクだ!」
「いいけどじじぃじゃなくてお兄さんだって……」
『えー私もー?』
実は着慣れない袴で疲れてんだけど。
秀樹はキラキラとした目でこちらを見つめている。
仲間になりたそうだゃなくて仲間に引き込みたそうだ。
「スカイピンクはいただいだぞ!」
大和さんが私と秀樹の間に立ってどや顔をしていた。
「ずるいぞ怪獣!スカイレッドがおまえをたおす!」
「貴様ごときに私が負けるものかふははは!」
なんだこれデジャヴ。
高校の時になんか見たことあるこれ。
魔王再臨した、怪獣として。
スーツで何やってんだこの人。
変わらないなぁ。
……着替えてこよう。
日が暮れて、沈んで。
夕ご飯をみんなで食べた。
「……なんか申し訳ないな」
大和さんが食事のことに対してか、苦笑する。
『ご飯食べに来たんじゃないんですか?』
「違うっての俺は厚かましい男か。なんでわざわざスーツなんだよ」
『え?卒業式だから、』
「式自体に間に合わないってわかってたからスーツの必要はない」
じゃあ何でスーツ?
夕ご飯の片付けが終わり、各々の行動に移ろうとしていた時に大和さんが口を開いた。
「おじさん、おばさん……話が、あります」
……どうしたんだろう、大和さん。
立とうとして足に入れていた力を抜く。
食事の時とはうってかわって、静まり返った食卓。
「話?」
お父さんがにっこりと笑った。
大和さんが口をむぐむぐとさせて手を首にやる。
言いたいけど言いにくい、みたいな。
「えーと、そうだな」
真面目な顔をして、隣に座った私の手を握る。
ありきたりな言い方をしますけど。
まっすぐ、言葉を続けて。
「妃代さんを、僕に下さい」
頬を赤らめて、緊張したような面立ちだ。
繋がれた手が、心地よく感じた。
「……大和くんは、妃代を泣かせないと約束できるかい?」
ふざけたお父さんが真面目だ、なんてこった。
……とかふざけてる場合じゃないよね。
「できません」
えっ、できないの?
私泣かされるの?
『そっ、そこはできるって言うところじゃないですか!?』
私が思わず言った言葉に大和さんが笑う。
「長く一緒にいるということは、すれ違うこともあると思います、泣かせることもあると思います」
確かに、そうだけれども……
大和さんが強気に笑って、お父さんとお母さんを見た。
「だからその何倍も何十倍も、彼女を笑わせて、幸せにすることを、約束します」
いつだってこの人は。
そう、まっすぐと、強い。
「……できるか?できます!ってやり取りをやってみたかったのにぃー」
沈黙を破ったのはお父さん。
残念そうに口をとがらせている。
『は?』
「ていうか一応婚約者なんだから駄目っていうわけないでしょー」
吹き出しそうなお父さん。
楽しそうで何よりですどっか行けもう。
笑っているお父さんを見て大和さんは緊張をとくように息を吐いた。
「ん、じゃあ、妃代」
にこり、と大和さんは私に向かって笑う。
「ちょっと付き合ってくれないか?」
『え?』
どこに?
連れられるがまま車に乗り込む。
話によると、今年からはこちら側に帰ってくる、らしい。
暗い中車を走らせる。
ついた場所は、沢山のライトで照らされた
『……遊園地?』
ここの遊園地、夜もやってるんだ。
絶叫系が有名で、観覧車には素敵なジンクスがある(と友達が言っていた)。
「おーナイターまだやってたかー」
わかりもしないで来たんですか?
営業時間はあと1時間。
あまり楽しめる時間は残ってないけど……
軽い足取りで大和さんが遊園地へと足を進める。
入園料を払って私の手を引いた。
「おっし、妃代、競争しようぜ」
そういって指を指されたのは、花で彩られた巨大な何か。
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