妃代ちゃんと○○くん2
「どうしてだ?」
「そいつシメるからに決まってんだろ」
堂々とシメるっていった!この人!
不良だ、不良。
「そういうことをするな青峰!」
「そういうことってなぁ……俺悪いことしてねぇんだけどな」
してるよね現在進行形で。シメるとか言ったよね。
青峰、と呼ばれた男は「はー」とため息をついた。
「もういいわ。おいテメェ、早く財布よこせ」
「生徒会長の俺を挟んで堂々とカツアゲか?」
「会長、そいつのそのオレンジの財布取れ」
「話を聞け!!」
話を聞かない挙句、生徒会長である方にカツアゲ手伝わせようとしてるんですけど青峰さん。
青峰さんは会長を無視して財布を奪い取った。
「蓮さん!」
後ろからの声に振り返ると、そこにはいかにも不良の子分として出てきそうな人と気弱そうな少年。
わぁ、すごい組み合わせ。
カツアゲされてる男の子と不良、って感じ。
青峰さんが反応したからこの人の名前か。
青峰蓮【あおみね れん】さんね。
怖いから気をつけておかないと。
ひゅ、と投げられたのはさっきの財布。
気弱そうな人が抱えるようにキャッチをする。
「それで合ってるか?」
……ん?
「はい、僕のです!!ありがとうございます……っ」
「僕の?青峰は小島の財布を取り戻したってことか……?」
不思議そうな会長の後ろからそぉっと離れていく、庇われていた人。
『あ』
「あ?……おい!こら待て丸山!」
さっきからおもってたけど……会長なんでそんなに人の名前スラスラ出てくるの?
すごいなぁ。
ていうか逃げた。丸山とかいう人逃げた。
「そういうことなら先に言えよ!」
「悪いことしてねぇって言っただろ」
「はっきりと言えはっきりと!」
「あのー会長。誰っすかその子?」
子分っぽい奴の言葉にそこにいた人の視線が私に集中。
青峰さんの目を見ると睨まれた気がして、少し後退りをする……と
転んだ。ドテリと。
結構痛い。
「……おい、大丈夫か?」
差し出された手を掴んで立ち上がった。
『大丈夫で……』
会長だと思って顔を上げると、そこにいたのは青峰さんで。
ぴょんと立ち上がって
どうすればいいかわからず謝りながらワタワタしていると
「……ふはっ!」
笑われた。
顔を見ると、その顔は優しくて柔らかくて可愛い笑顔。
あれ、怖くない。
「なんかお前ヒヨコみてぇーだな。ぴよぴよって言ってみろ。ほれ、ぴよぴよ」
青峰さんが少し口を尖らせてぴよぴよと口で言い出した。
え、何?
『……馬鹿なの?』
どうしようこのイケメン……バ可愛い。
「あ?」
あれ、怒った?
でも一回怖くないって思ったら怖くないなぁ。
「はいはいそこまでー」
会長が私と青峰さんの間を切るように手をブンブンとふる。
「こいつ、桃瀬妃代ってんだ。俺の婚約者だから」
ニコリと笑ってそう言い放った。
断ったんだってば。
子分くんは、えぇ!?と驚いたような声を上げる。
「桃瀬、」
『はい?』
少しだけ黙り込んだ彼は、顔を上げて私を見た。
「あー……なんか、俺も婚約者とか言われたんだけど」
「『は……?』」
「校長に」
どういうことですか晴信さん?
「……ちょっと校長室行くぞ!」
また引っ張られた!
もう疲れたよー!
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