あの日私は、今の私は1
自分の想いを少しだけ整理できて、気分もいいし。
さぁて、夏休みをエンジョイしますか!
『なぁーんて、浮かれてる場合じゃなかった……!』
目の前のぐしゃぐしゃの紙をじっと見つめる。
私の手によってぐしゃりと潰れて、手汗でいっぱいの紙たち。
「んなに眺めても結果は変わんねぇぞ……」
『蓮が赤点なしとか反則!』
「意味わかんねぇ」
私の手中にあるのはついさっき返されたばかりの、期末テスト。
つい数日前にあったテストの結果。
結果は惨敗、赤点だらけ。
……私ってこんなに馬鹿だったんだなぁ。
蓮馬鹿そうなのに、馬鹿そうなのに!!
赤点なしとかどういうこと!?why!?
そこまでいいわけでもなかったみたいだけど!
「俺は夏休み予定でいっぱいなもんでな。それなりに勉強はしてんだよ……つぅか全部ダダ漏れだからな喧嘩売ってんのか?」
『やっだなー、蓮に喧嘩売るとか馬鹿のやることだよー』
「お前馬鹿だもんな」
蓮が私に対して冷たいです冷たすぎます。
婚約者(仮)に対する態度じゃないです。
「お前婚約者嫌だっつってるくせに都合よく利用すんな」
『だよねー……って、また口に出てた!?』
「ばっちり」
私どんだけ口に出しちゃうの?
馬鹿なの?あ、馬鹿だった。
……自分で言ってて自分で悲しくなってきた。
ていうか、夏休み予定でいっぱいだから勉強するって……
もしかして、
「赤点のやつは夏休み補習あるからなーさぼんなよ!」
岩倉先生の悪魔のお声……が……
やっぱり!補習あるんだ……
夏休み潰れた……補習って。
てなわけで、補習なうです。
補習って言っても、先生が面倒くさがって大量のプリントを置いて「終わったら俺のとこに提出してから帰れー」っていうものでした。
……面倒くさがるな!
教室には半分以上のクラスメート。
……このクラスってば、おバカさんばかり!
私も含まれるんだけどね。
『おーわーんーなーいぃぃい!!』
シャーペンをぐるぐると回しながら問題とにらめっこ。
テストできなかったからここにいるわけですよ。
つまり、プリントどーん!って出されても解き方なんてわかんないに決まってる。
先生鬼畜……もう嫌。
とりあえずなんとかなりそうな国語の現代文から取り掛かることに決めた。
評論?小説?ノリでやるに決まってるじゃない。
適当に文章を読んで、適当に選択肢を選ぶ。
センター試験の問題を持ってきたとのことで、全部選択問題だった。
……うん、間違っててもいいや!埋まってれば何も言われまい!
しばらく向き合うこと数十分。
現代文なんとか終わり!
そのまま古典もやっちゃおう!とか思って次のプリントへ。
……なめてた、うん。
なにこれ、漢字並んでるだけじゃん?わけわかんない言葉並んでるだけじゃん?
わっかんない……!
本当に苦手なんだってば、古典は!!
ばしり、と何かで叩かれる。
誰!?
キッと睨むと私の机に置かれたのは古典の参考書。
私のものだった。
「何のためにロッカーに参考書置いといてんだよひよこは……」
『蓮エスパー!?』
なんで私が古典やってるって、それでいて悩んでるってわかったの!?
って、思ったらなんか私の参考書全部持ってやがった、この不良さん。
ロッカーに教科書と参考書しか入ってないから開けられても別にいいんだよねー、恥ずかしくない。
『っていうか蓮なんでいるの?』
「蓮ちゃーん!やっと来たー!」
「そこの馬鹿に呼び出された」
あぁ、御門くん……
「妃代ちゃーん?妙に納得してる顔してるけど、俺妃代ちゃんよりは補習の教科少ないからね?」
なんだと……!?
このクラスは「馬鹿に見せかけて実は結構出来る子なんです!」詐欺だな!?
赤点の時点でできるもくそもないけどね!
どんぐりの背比べだこの野郎!
「まぁ、昼飯おごりってわけだし、バイトの合間に来てやった」
「蓮、次のバイトは何時からだ?」
「陽、お前も補習かよ……あー、3時から」
陽くん、頭良さそうだけど……
まぁ、部活馬鹿だもんね、野球部だっけ?
蓮予定いっぱいって、バイトか。
家計厳しいって言ってたもんなー……
『ていうか蓮そんなに頭良くないでしょ』
頼むならクラス上位の子とか……
「蓮ちゃん英語満点なんだよー?俺全く理解できないのは英語だけだしー」
『嘘!?』
「本当」
『隠れた才能が今ここに……!』
「隠れた才能も何も、蓮って帰国子女だろ」
まじですか。
何それ似合わない。
ずっと日本にいますよ日本大好きヤンキーじゃないの?
「あー……まぁ」
何その歯切れの悪い返事。
御門くんに教えながら陽くんと会話している蓮。
むむ、確かに発音いいな……
「桃瀬、旦那に見とれてるのは構わないが早く終わらせた方がいいんじゃないか?」
『旦那って……!』
御門くんが言ってもギャグにしか聞こえないけど陽くんが言ったら本気に聞こえるからやめてよ!!
課題プリントが終わったらしい陽くんが立ち上がり先生に提出するべく立ち上がった。
みんな次々と立ち上がって教室から出て行く。
「できた!妃代ちゃんも頑張ってねーっと」
御門くんがルンルンと上機嫌で立ち上がって教室から出て行く。
うわぁ、最後……
私クラス最下位だったっけ?いや違ったはず。
なんでこんなに時間かかってるのさ……
「そこはhasじゃなくてhad」
ぺしん、と頭を叩かれた。
「ほら、泣きそうな顔してねぇでさっさと終わらせて飯食いにいくぞ飯。壮介のおごりだぞ」
それ、私もいいのかな?ダメでしょ……
いつのまにか隣にいた蓮が丁寧に教えてくれたおかげで英語は終了。
次々と戻ってきたみんながそれぞれ得意教科である教科を教えてくれたから、なんとかプリントを終わらせることができた。
みんないい友達だ……!
「これが毎日とかやる気失せるよな」
『うぅ……』
「蓮ちゃん明日もカモン!」
「昼飯」
結局お昼についてきた。
本日は学校近くのお好み焼き屋さん。
……さすがに自腹だよ?おごってもらってないからね?
お店の中に貼ってある張り紙をみて御門くんの表情が明るくなった。
「ねぇ!来週花火大会あるって!みんなで行かない!?」
あぁ、来週って……ここからちょっと離れた小松川の花火大会かな?
毎年すごい綺麗な花火あがってるんだよねー。
出店もたくさん出ちゃったりしてさ。
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