りんかいがっこー。1




「『海だ!!』」

「そうだなー海だなー」

「……」



朝日学園
IN海!


というわけで臨海学校に来ています。

どういうわけだって?
そういうわけです察してください。



今は移動中で、バスの中から海を眺めています。



嬉しそうにはしゃいでいるのは私と御門くん。
呆れて流しているのは蓮。
そして陽くんは寝ている。


バスの中からみんなハイテンション。


なんで男子たちがハイテンションか?
それはですねー。


「今年は鹿央女子と合同とか最高だろー!」

そういうわけです。



朝日学園の近くにある鹿央女子高校と初めて臨海学校が合同になったからです。

みんな問題起こさないでよねー。




女友達できるかなー!

……なんて、淡い期待は捨てておこうか。
わかっていた通りお嬢様半分にギャル半分の高校だしね。
私と性格合いそうな人その時点でいないからね。


しかも仮にも私は現在「男子校に乙女1人!うふふ、逆ハー!」状態なのです。



多くの女子の憧れだよ?男子のなかに女子1人。私は嬉しくないけど。

だって必然的にお姫様扱いされるものじゃん、取り合いとかされちゃう感じがするじゃん。私は全然そんなのいらないけど。



イケメンも少ないわけではないのだ、この学校は。

そんな状態を彼氏が欲しい女子が見たらどうなる?
羨ましがるはずだ。
私を恨むはずだ。


女子のドロドロとした何かに巻き込まれる可能性、無きにしも非ず。

特に婚約者(仮)の3人を狙ってる人たちに恨まれるに違いない。あれでもカッコイイから、みんな。



少しずつ心配になってきた私を無視して、岩倉先生が大声で「もうすぐでつくから降りる準備しろよー」と言葉を発した。




降りるとそこには

誰もいない海!わぁ広い!
大きな建物!ここに泊まるのだろう!




『なんで誰もいないんだろー!わぁーわぁーテンション上がるー!』

「そりゃいないでしょー、朝日学園の海だしー」
『へっ?』



間抜けな声が出てしまったことなんて気にしない。

軽く御門くんが言った言葉が耳に残った。
……朝日学園の海!?


何者なんだろう晴信さん。


私立じゃないよね?公立だよね?
……というか私立でもありえないけど!



「校長も金持ちだよなー。あの人何年ここの校長やってんだか」



どんだけ朝日学園好きなの、晴信さん。
私が知ってる限りではだいぶ前から校長をやってたような……




「おい、部屋に荷物置いてくるぞ」

陽くんの言葉で御門くんと蓮が動き出す。



「あーちょっとちょっと、妃代ちゃんと青峰くん。カモンカモン」


聞き慣れた声に振り返る。
そこにいたのは晴信さんだった。
……なぜに服がハワイアン?別にここ南国の海じゃないですよー。




「なんスかー?」

だるそうにガラの悪い歩き方で晴信さんに近付く蓮。
おまわりさーん、ここにチンピラがいます。



「君たち、同じ部屋ね……妃代ちゃんのお父さんには許可貰い済みだからさ」


むしろ英治が言ってたからねと晴信さんが笑う。


「『……は?』」



すとっぷ、うぇいと!!


……私は1人部屋のはずだ。はずだったんだ!
だって女子1人だもん!!



「あとは白鳥くんと黒松くんもね。部屋はここね!じゃあ」


紙を押し付けてニコニコと去っていく晴信さんをポカンと見つめたままだった。
……はっ!



『いやいやいやいや!おかしいでしょ!乙女が3人の狼と同じ部屋とか!』

「……乙女とか狼はともかく。何考えてんだ校長」



乙女否定されたーあははー。



どうするんだ、女の子をそんなところに放り込む?普通!

お父さん、帰省したら覚えといてね?マジで。
心の中で呟いて、押し付けられた紙に書いてある部屋へ向かった。

近くに空いてる部屋ないかな。










「遅かったですね。先輩方」

部屋のドアを開けると、優雅にくつろいでいた未来くんがこちらを見た。

あ、コーヒーいいねー。
私コーヒー飲めないけど。




「いきなり知らされたんだよ、ついさっき」

「あれ?僕は結構前から知らされてましたけど……」



謀りおったな、晴信さん。

否定しそうな私たち2人には直前まで言わなかったってわけか。




「今日は夕方5時までは自由みたいですよ?一緒に海に行きましょう、妃代先輩!」

ニッコリと紳士な笑顔をこちらに見せて、立ち上がった。


……はいはい、行けばいいんでしょ。わかったわかった。




『あれ?会長は?』

そういえば奴がいないじゃないか。
どうしたんだろう。



「大和会長なら着替えてどっか行きましたよ?」



早いな。
楽しみにしてたのか?



着替えようってことになって、私は部屋についていたトイレの中で着替えた。

水着の上からちょっとだけ大きいTシャツを着込んで、いざ出発!



……と、思ったら何者かにTシャツを掴まれた。

「なに着てるんですか?」



爽やかな笑顔を見せる、少年。

『Tシャツ』
「見ればわかります」


掴んでいる力を強めて、上に引っ張られる。




「脱いでください!」

『いーやーだぁぁぁあ!』

「どうせワンピースのやつじゃないですか!Tシャツなんて着てる必要ないでしょう!」

未来くんと続く、攻防戦。



……畜生!蓮を召喚するしかない!



『蓮ヘルプ!未来くんが私を襲ってくるぅぅう!』

「はぁ……黒松、ほっといてやれ。どうせ海行ったらTシャツ脱ぐんだろ」

「ちっ……そうですね」



今舌打ちしたんですけどこの子。
怖いんですけどこの子。
蓮の言葉で諦めて私から離れる未来くん。


蓮に手を引かれて海へと向かった。



建物から出ると、鹿央女子高校の人たちも到着したらしく女子と男子が混ざり合っていた。



うわーおビキニ。
大胆だねー。
私は胸小さいしお腹ぽっこりなのでそんなの着れないです。

ナイスバディだったら喜んで着ていたかもしれない。誠に遺憾である。



「おーお前ら。ようやく来たかー」



海パンをはいて上にパーカーを羽織っている会長がメガホンを持って笑っている。



「大和会長泳がないんですか?」

「俺は監視係でーす。馬鹿な奴がふざけて溺れないようにな」



はぁ、面倒くせっ。と言って会長がメガホンをくるくると回してみせる。



……ていうか、ずっと思ってたんだけど、実際見て確信したよ。




『会長、腰細っ』

「いきなりそれか?」



ずるいじゃないか。男なんてしっかりした体型でなんぼじゃないのか会長は頼りない体型ってことだ残念だな!
羨ましくなんてないんだからねっ!




「あっ、あの!」

「……はい?」

突然、可愛らしい小さな女の子が未来くんに話しかけた。


「良ければ一緒に遊びませんか!?」



その子の周りには女子数名。

……ターゲットロックオン!ってか?



「すみません、僕はもう約束してる方がいるので」



そういって私をちらりと見た。
……約束したっけ?


女の子は残念そうに、去っていった……私を睨んで。



あぁ、周りの女子たちの視線が痛い。



『ていうか私未来くんと約束した覚えないし』

「婚約者ですから」



ニコリ、と。
大きな声で、爆弾発言。


驚きと共に刺さり来る女子の視線。


あぁヤメテ、敵を増やさないで。



『私は認めてないって言ってんじゃん!』

「あなたに拒否権はないと思いますけどね。ご両親も許可してしまっているのですから」



私は売り物なんかじゃないんだからね……!

私にだって意思はあるんだから。
私にだって好みはあるんだから。



だんだん腹が立ってきて。
今まで我慢してたものが爆発する。



『両親が許可してるから拒否権はないだぁ?』



3人を目の前に低い声でそう呟く。

じろり、と睨みつけると蓮が苦笑いをして少しだけ後ずさった。



『そっか、私の意思を無視して恋愛ごっこやりたい最低男達なんだねあんたらは!』



 

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