似合うと思ったから1
「まだ学校にいたのか?妃代、帰るぞ」
『今日用事あるんで!!』
用事なくても会長と帰る必要はないけど!
放課後、約束の時間に近付いていて急いで学校を出た。
学校最寄りのバス停からバスに乗る。
今日は友達とショッピングの約束をした日。
突然転校した理由とか話したいし、少し前に約束していた。
がたごととしばらくバスに揺られて、ついたのは
長く離れてたわけじゃないのに懐かしく感じる街。
待ち合わせの場所には親友の姿。
『まややーん!』
「妃代!」
平岸真綾【ひらぎし まや】
通称まややん。
私が前に通っていた菜月高校に通う私の親友。
身長が小さく、可愛い子だ。
『相変わらず小さくて可愛いなぁ!』
「小さくないっ!」
本人は気にしているようだ。でも可愛い。
彼女は拗ねるように頬を膨らませて見せた。そんな姿も可愛らしい。
「可愛い制服だねっ!……でも、どこの?妃代って、どこの学校に行ってるの?」
ようやく着慣れてきた新しい制服をまややんがまじまじと見つめる。
どこの制服かなんてわかるわけがない。
私は朝日学園初めての女子生徒なのだ。
つまりこれは……私が今身につけているものは、史上初の朝日学園女子制服なのだ!
言わなきゃね。
朝日学園に転校したこと。
店に行くまでの道中で、転校の理由をざっくりとまとめてまややんに伝える。
話を終えたあとにまややんの顔を見るとキラキラと輝いていた。
「男子校!?カッコイイ人いる!?」
……まややんは面食いだったんだ。
面食いというか、カッコイイ人を見るのが大好き。
『うーん……まぁ、いるんじゃないかな』
まややんの好みでいくと……未来くんかなぁ……?
毒舌だけど。
「いーなぁ!代わってよぅ!」
こっちが代わって欲しいわ!
はっ、でもまややん可愛いから交代したら襲われてしまう!
「でも、なんで婚約者なんているの?お金持ちとかならありそうだけど、妃代の家普通だよね?」
『そう、なんだよねー……』
今どきお金持ちでもいるのかどうか不明だけどね。
“恋愛に興味がない?”
“ないです”
“……だから、強制参加なんだよ?”
晴信さんの言葉が未だに引っかかる。
恋愛に興味がない人間ならたくさんいるでしょう?
そんな人を見つけるたびにこんなことしてるわけじゃあるまいし。
……なんなんだか。
「あ、着いた」
目的の店に着いて、店内にはいると夏を感じさせる音楽が心地よい音量で流れている。
もう夏だもんねー。
「見に行こうか!」
『うん!』
今日買いに来たものは
水着!!
もうすぐ臨海学校があるから、買いに来た。
1人じゃ寂しいので、お話ついでにまややんを誘ったわけだ。
「いいなぁ臨海学校かぁ、楽しそう!」
ウキウキしながらまややんがいろんな水着を見る。
まややんは夏休みに入ったら彼氏と海行く!と嬉しそうに水着を選んでいる。
……彼氏いるのに「カッコイイ人いる!?」とか聞いてきてるんだよね。
いいのか?まぁ、イケメン探しくらいはいいのかな?結局彼氏一番ってうるさいし、この子。
「臨海学校といえば鹿央女子ももうすぐ臨海学校あるみたいだよ?」
『へぇー』
鹿央女子ってお隣の駅の学校だっけ?
あのお嬢様半分ギャル半分の異質な学校ねー……
朝日学園の結構近くにあるけど近寄りがたいんだよな……
もしかしたら2校合同で、っていう行事なのかな?
よかったねぇ男子、女子がいるよー。まだ決まったわけじゃないけど。
「妃代どんな水着にするのー?」
『え?競泳水着とか……?』
「色気無いよね!?」
いや、色気とかいらない。
むしろ、ないほうがいい。
「婚約者さんたちも喜ばないよー」
『私があの人たちを喜ばせる必要性がないよね?』
むしろ、女なら誰でもいい的なこと言ってたし?
見栄なんてどうでもいいでしょーが。
むしろ引いてしまうくらいの水着を選ぼうかな。
「ビキニ恥ずかしいならこんなのどう?」
笑顔でまややんが差し出してきたのはワンピース型の水着。
……私の趣味をわかってらっしゃるこの子。
モロ好みです、柄とか形とか。
……うん!
別にいいよね?あの人たち引かせるとか考えなくていいよね?
自分の好きなの選んでいいよね?
自分の言ったこと即行で無視してるけど問題ないよね?
『それにする!』
ビキニにもなる優れものらしいよ。
しないけどね!
まややんも気に入った水着を買って、買い物終了。
あとは時間になるまでだらだらと服見たりしようかって話になった。
いろんな店に寄って、お揃いのマスコットキーホルダー買ったりして。
あぁ、友達っていいよね!
女友達っていい!
私の幸せ生活を崩した父親は許さない、絶対にだ。
あとで覚えてろ。いつか復讐してやる!
買い物を終えて再びバスに揺られる。
学校寮の最寄駅まで戻ってきた。
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