優しさに触れて1





“ひめ、”







夢を見た。



懐かしい、夢を。




“私からはなれないでね”
“私がまもってあげるから!”


お姫様のような彼女に私が言った言葉。

言葉が通じることはなかったけれど。



その言葉のおおよその意味を感じ取ってくれた彼女は、
それから私を“ひめ”と呼んで何度も可愛らしい笑顔を向けてくれた。




お姫様は、君なのにね。




どうしてかな?大好きな“ふーちゃん”


大好きなのに、私は君の名前すら知らないんだよ。



もう一度、会いたいなぁ……




突然私の目の前から消えた彼女は

……今、どこにいるんだろうか。


















『と、いう夢を見たのです』

「……だから?」



蓮に話すと、一刀両断。

酷いよ。



『これはもしかしての“ふーちゃん”が転校してくるフラグじゃありませんか?』

「いや、まぁ、ありえねぇな」



お前は特例なんだろ、と呆れたような蓮の声。


ソウデスネ、ここ男子校デスモンネー……
彼女はどんな子に育っているのだろう。

きっとお姫様みたいな女の子に、なっているんだろうな。



『会いたいなーふーちゃん』

「名前も知らないんだろ?会っても気付かないで終わりそうだなそれ」

『運命的な何かできっとわかるよ』

「無理だろ!!案外もう会ってたかもな」



馬鹿にするように蓮が私を笑う。



イラッときたから取り敢えず足踏んどいてあげた、全力で。


痛そうにしゃがみこむ蓮。
ざまぁ。



「おはよう、桃瀬」

『おはよー陽くん』



今日も元気に無表情ですねー陽くん。



荷物を置いた陽くんが私をじっと見る。



……何?

そんなにみつめられたら、惚れちゃうよ。
なんちゃって。



「結局会長が好きなのか?」

『はい?』





「昨日会長とキスしてただろ」





『……え?』



陽くんって寮住まいなんだね!新発見!

じゃなくてですね?今言うのそれ!?



「……おい、どういうことだよ陽、ひよこ」



足を抱えていた蓮がゆらりと立ち上がる。

怖いよ!



クラスの視線が私に向く。


「ぷくくー修羅場、修羅場!」



御門くん黙って?



「いや、だから……昨日の夜ホールでキスを」『あれは会長が無理矢理……っ!』



あ、やばい。

蓮のお顔が怖い。



無言で背を向けた蓮がドアの方へと向かっていく。



『あの、どこへ行くんですか?……蓮、サン』



「ちょっと3年A組教室に行ってくるだけだ」



3−Aって会長いる教室ですよー。
何をするつもりですかー。



『暴力沙汰起こさないでよ!?やめてよ!』



蓮のシャツをつかんで引っ張る。


わぁ、力勝てなーい。
って、勝てるわけないだろ!



「大丈夫だ。ちょっと腹に1発かましてくるだけだから」

『大丈夫じゃないから!』



真顔で蓮が拳を作った。



蓮の場合ね?その1発が重そうだから。
気絶できそうだから。



私の必死の抵抗に、蓮は諦めたようで自分の席に戻る。


……良かった、事件が起きなくて。






「おーい、妃代」






馬鹿みたいにタイミングが良すぎ。
どっと全身から汗が吹き出したような気がした。

クラスのみんなの視線が自分に集中している気がした。




うわ、ここにいたくない。


会長が立っている方の方ではない、もう1つの方のドアから走って出る。

なんか、教室にいられない。



「おいっ、妃代!?話がー…」
「おーう、丁度いいところに来たなぁ会長」

「あ?……ごふっ!」


「わー、蓮ちゃんの技が綺麗に決まった!」







 

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