噛みつくようなキスを、1




『アイスが食べたい!』



夜、お風呂入ったあとにベッドの上で寝転んでいるとき

突然の“アイス食べたい病”が始まった。



よし、買いに行こう!



『かいちょー!コンビニ行きませんかー?』



どんどんとドアを叩いても会長は出てくる様子はない。



……寝てるのかな?早いなぁ。



しょうがない、1人で買いに行こう!



会長効果もあってか、寮からは何事もなく出れた。


会長こういう時は感謝しときます!



電灯で照らされた道を歩きながらコンビニへと向かう。

結構明るいから1人でも大丈夫だ。



いつ食べたくなってもいいように大量のアイスをコンビニで買って、外に出る。

よーし、帰ろう。アイスが溶ける前に!
夏が近づいているのか、暑くなってきてるからね。すぐ溶けちゃう。



来た道を戻ろうとした時、大きな声が響いた。



「ありがとーございましたっ!」



びっくりして声のする方を見ると
あったのはガソリンスタンド。

元気だなぁ。



……今挨拶したそこで働いてる人、見たことあるんですけど。



『蓮じゃん』



バイトしてるんだ、ガソリンスタンドで。



「「蓮くん!」」



彼に向かって小学生くらいの小さな少年少女が走っていく。

2人は蓮の足元に抱きついてキャッキャと楽しそうに騒ぐ。



蓮はしゃがみこんで嬉しそうに2人を力強く撫でた。



なにあそこ。あそこだけほんわかしてる。
写真取りたい。



「おー、ひよこ!」



私に気付いた蓮は笑顔で私の方を向く。



『蓮観賞用としてはパーフェクト!』

「いきなり意味わかんねぇよ!」



私なりの最大の褒め言葉だよ?
いや、最大でもないかもしれないけれど。


ガソリンスタンドに近づくと2人の少年少女がじっとこっちを見てくる。



「蓮くんこのひとだぁれ?」

「ひよこさんだぞー」

「「ほんと!?ぴよぴよゆってぇー!」」

『ぴよぴよー。もしかしなくても蓮の妹弟?』

「マジで言った!……よくわかったな」



可愛い子供のためならプライドなど捨ててみせましょう。超余裕。



思考回路同じだもんこの子達、わかるわそりゃあ。
双子かな?似てるし。



一瞬「あれ?ロリコンでショタコン?」とか思ったけどちがったね。



『アイスいる?君たち』

「「いる!!」」



子供は素直でよろしい!
あぁ本当可愛い!子供大好き!



「お前らちゃんとお礼言えよー。ひよこ、ちょっとこいつら見ててくんね?」



私の返事も聞かずに蓮は歩いて行ってしまった。

無責任兄貴だな、攫っちゃうよ!?



『君たち名前は?』



美味しそうにアイスを頬張る子達を交互に見ながら質問する。



「ちえ!」
「しゅんた!」


『ちえちゃんにしゅんたくんね』



ニコニコと笑っている2人は嬉しそうに私を見てくる。



しばらく経ってから、蓮が私服に着替えて戻ってきた。

ちょうど終わりの時間だったみたい。



「悪いな」

『いえいえ、目の保養をありがとう。じゃあね』

「お前のキャラいまいち掴めねぇ……って、ちょい待て!」

『まだ何かあるの?』



アイスが欲しいのか?

しょうがない、アイスなら特別価格で売ってあげよう。友人価格200円で。



「送ってく」

『いや、別にいいし』

「暗い中女1人で帰せるかよ」



「「一緒に帰ろーひよこさん!」」
『うん、いいよ!』



蓮は少し苦笑して私を見る。



こんな可愛い子たちに頼まれて断るわけないでしょう!!



さっきは1人で歩いていた道を今は4人で騒ぎながら通る。



『ていうか、蓮ってバイトしてるんだ』

「あー、おう」



蓮は騒ぐ千絵ちゃんを肩車しながら笑う。



「しゅんの家はちょービンボーなんだぞ!!」



蓮くんがいってた!と俊太くんが私とつないでいる手をブンブン振りながら言った。



あー貧乏なんだ。
なんか意外。お昼ご飯普通にたくさん食べてたし。

お金ない人ってあまり食べるイメージなかった。


「大家族だからな、俺んとこは」



楽しそうに笑っているところからすると、貧乏でも幸せなんだなー。

家族に恵まれててよかったね、なんて思った。



『きょうだい何人いるの?』



「おー……えぇっと、6人?」

『多いね』

「そのくせ両親は旅行ばかり行きやがる」



そりゃ貧乏にもなるわ。



蓮の両親……大丈夫?



「兄貴は大学生でバイトしないわ、姉貴はニートだわ。駄目だなうちの年上共は」


すごい家族だな。
大変そう。


呆れたように笑っている蓮。
だから、蓮が働いてるんだとか。

偉いね、蓮。


寮の前に到着。



千絵ちゃんと俊太くんが「ばいばい」と言って笑顔でこちらに手を振ってくる。



『あ、蓮』

「おぁ?」

『これあげる。お礼』



袋に入っていたアイスをひとつ取り出して蓮に渡す。



……うわ、多分溶けてる。



「家に帰ったら冷やして食うわ。サンキュー」



じゃあな、といって俊太くんと手を繋いだ蓮は歩いて行った。



兄弟というより、親子に見える。



寮の中を急いで移動。

アイスを冷やさなきゃ食べれない!!





 

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