「はじめお前また怪我してる!」
「大丈夫だよ、転んだだけ」
いつもそうだった。
髪色が気味悪いだとかいじめられて。
上級生にも目をつけられて。
喧嘩のような、日々だった。
幼なじみはいつも心配して怒るから。
俺は何もないかのようにばればれの嘘をつく。
笑ってみせる。
泣いたら情けないから。
泣いたらお前がさらに心配するから。
絶対泣いてなんかやらないよ。
そんな日々を繰り返していれば、一緒にいた融にまで目を付けるクソ上級生。
屋上に呼び出されていたことを知らなくて、慌てて行った頃には融はもうボロボロで。
だから、初めて幼なじみの前で喧嘩した。
融を傷つけたそいつらに仕返しした。
そいつらを追い払った後、融を見ると彼は後ずさりをする。
雨が降ってきた。
傘が欲しい。
あーあ、嫌われたかななんて目をそらそうとしたとき、融の後ろのフェンスが嫌な音を立てる。
それは古くなっていたのか壊れた。
寄りかかっていた融が、落ちそうになる。
嫌にスローに見えた。
「融!!」
とっさに手を伸ばして引っ張って。
彼を救った代償のように、俺が屋上の床から離れた。
あぁ、俺死ぬのかな。
そうだよな、ここ5階だしな、下はコンクリだしな。
手を伸ばされた気がする。
それは掴めなくて俺は落ちていくだけだけど。
雨、降ってて良かった。
泣いてもバレない。
ちゃんと笑えたかな。
お前の中の俺は、強いままでいられたかな。
──次に彼が起きたのは、赤い、暗い部屋だった。
どうして何故自分が何者なのか。
彼は何も知らない。
強い僕でいたかった