「久住、さん」
私が部屋に訪れると、部屋の鍵は無防備にも開いていた。
彼はベッドの上ですやすやと眠っている。
お疲れなのだろうか。
リヤンは飼い主を気遣うように、いつものように吠えることをせずに私に寄ってくる。
賢いわんこだ。
どんな顔で寝ているのかな。
綺麗な人は寝顔も綺麗なのかな。
失礼な興味本位で近付いた。
警戒を解いたような雰囲気で彼は静かに眠る。
呼吸が浅いのか胸もあまり上下していない。
肌は白い。
……死んでるみたいだ。
そっと手に触れればやっぱり冷たくて。
「……や、だ」
寝言、のように言葉が彼の口から漏れる。
離そうとしたら、久住さんの手に力が込められた。
「ね、離れないで……」
涙が浮かんだその表情に、私は冷たい指を絡める。
「離れません、よ」
離したくないと思った。
たとえその言葉が私に向けられたものじゃないとしても。
冷たい指先を絡める