※「ほんとうのぼく」の続きのような。
すやすやと寝息が聞こえてくる。
ようやく寝たかと、一息ついた。
本当に、こいつは
甘え方を知らないらしい。
部屋からいなくなってほしくないなら、側にいてほしいなら。
そう言えばいいものを。
愛され方も、常識も、教えてもらわないまま育って。
でかい子供だ。本当に。
小さい頃から親に捨てられて、酷使されりゃ仕方ない話なんだろうが。
ベッドのカーテンを閉めると同時に医務室のドアが開く。
「軍医さーん、失礼しまーす」
「おう、槇田か……今ベッドで寝てる奴いるから静かにしてくれ」
「あ、すみません」
そこにはへらへらした顔の槇田が立っていた。
小野寺のバディに推薦しといた奴だ。まだ発表はされてないらしいが。
「外出した時に美味しそうな菓子見つけたんでおすそ分け!」
静かにしろと言ったんだが。鳥頭かこいつ。
「悪いな。ありがたく頂くわ……ところで槇田、バディについてはもう聞いたか?」
「何それ?バディ?」
まったく発表されてないのかよ。
「そんなのできんの!?バディかぁー気の合う人だとすっげぇ嬉しいなぁ!!」
「うるせぇ」
目をきらきら輝かせている槇田。
ベッドをちらりと見てため息を吐いた。気は合わねぇだろうな、うん。
「俺党首に呼ばれてんだよね、じゃあねー軍医さん!」
「ああ、怪我すんなよ」
明るく槇田は出ていく。
……例え、性格が合わなくて。
俺の思惑が外れて小野寺が何も変わってくれなかったとしても。
あいつが、お前の味方にならなかったとしても。
(俺だけは味方でいるよ)
君だけは味方でいてよ