馬鹿みたいだ。
じりじりと、肌に熱が張り付く。
太陽は依然として毎日のように俺を焼き殺そうとしてきて、大量の汗が流れてきてもううんざりだ。
そのくせ青い空は見えない。
「アイリス」
「……私ね、暑いのダメなのよ」
「わかったよそれは。でも立ち止まっても暑いのには変わりない」
彼女は木の下にちょこりと座って、俺をじとりと睨んだ。
「睦月さんはすごいわ。余裕そうで」
「余裕なわけないだろ。汗だくだ」
今すぐにでもシャツを脱ぎ捨てて川にでも飛び込みたい。
そんなことしたらみすぼらしい筋肉が顔を出してしまうからやるわけがない。
……俺もしかしてアイリスより筋肉ないんじゃないか。
男なのに。
いやいや、戦場を走り回った人間と軍医を比べる方が馬鹿らしい。
今に見てろ、逆転してみせるさ。
「早く近くの街に行ってアイスでも買おうか」
「いい提案だわ」
アイスに反応して目を輝かせてアイリスは立ち上がった。
子供かよ。
一歩。
一歩。
ゆっくりと歩みを進めていく。
絶対に届かない空を追い求めて歩き続ける俺たちは何て馬鹿みたいな人生を歩んでいるのか。
隣で笑う彼女を見てまぁそれでもいいかなんて、思うんだ。
空には届かない