「真琴ー!」
家に大声で入ってきたのは兄である高橋大河。
結局パーティーをやることになり、呼び出すとすぐに行く!と言い数10分で到着した。
ぎゅう、とお兄ちゃんが私に抱きついた。
「なんで!瑛太の家!なんで1人暮らしじゃないんだ、というか俺と一緒に暮らさないんだ!」
お兄ちゃんがえーちゃんを睨みながら言うもんだから、えーちゃんは首を傾けた。
「……大河の家じゃ、真琴が可哀想だべ?」
「ホントだよ、ちったぁ掃除しろゴミ屋敷主人」
……ゴミ屋敷なの?
掃除苦手だったの、悪化してるのか。
やだな、お兄ちゃんの家遊びに行きたくない。
それに、お兄ちゃんの家に行かなかったのには他にもある。
「彼女さんにとって私はお邪魔でしょ?」
「お前、こいつに彼女いると思ってんの?」
私の言葉に嘲笑したのは晃くんだった。
あ、いないのか。
何だか悔しそうな表情を浮かべたお兄ちゃん。
可哀想になってきた。
「いいんだよ、俺には真琴がいるから」
「まぁその真琴は瑛太のだけどな。ひとりぼっち野郎」
すかさず返す晃くんは何だかお兄ちゃんを貶すのが手慣れた様子にも見える。
もうやめたげてよぉ!!
晃くんの彼女である文香さんは苦笑いをしていた。
文香さんに初めて会ったけど、綺麗なお姉さんだし話しやすいし綺麗だし憧れる。
2人のやり取りを気にせずにえーちゃんは料理に手を伸ばし始めた。
「うま」
「えーちゃんまだパーティー始まってないよ!?」
「ええ?腹減った」
もぐもぐと口を動かすその人は幸せそうに顔をふにゃりと緩めた。
美味しそうに食べるよね。
マイペースだな。
ゴーイングマイウェイ。
そんなあなたも好きです。
でも手で掴むのは行儀が悪いのでやめましょう。
「真琴が作ったのどれよ」
お兄ちゃんを貶し終わったのかひょっこり後ろから現れた晃くん。
すごく……すっきりした顔をしてます……
ストレスでも溜まっていたのだろうか。
料理はみんなで作った。
晃くんは買い出し係だったから誰が何を作ったのか知らないんだ。
「えっとねぇ、これとこれ」
私が唐揚げとサラダを指さすとそれを避けるように隣のパスタに箸をのばした。
待て、何故聞いた。
「何で聞いたの」
「何でって……食物兵器を口にしないため」
食物兵器!?
私ちゃんと料理できるから!
「美味しいよ」
文香さんが私に笑いかける。
あぁ、優しいよぉ。
「私が文香さんの彼氏になろ。晃くんは別れなよ」
「何言ってんだおめぇ」
冷たい視線はやめてほしい。
立ち直ったお兄ちゃんも料理に手を付け始める。
ちょっと待て。
パーティーなんだよね?
何か忘れてないだろうか。
「みんな何か言うことないの!?」
「真琴唐揚げうまいよ」
ありがとうえーちゃんでもそれじゃない。
「うぇーい、いただきまぁーす」
箸で取り分けながら散々食べた後に言っちゃうの!?
「装飾が汚いな」
それやったの晃くんだからお兄ちゃんシバかれるよ。
「……あ」
気付いたらしい文香さんはまた苦笑した。
私はグラスを手に取った。
─グラス片手に音頭を取りましょう─
(まず料理に向いた手を止めてください!)
「かんぱーい!」
「真琴ちゃんいらっしゃい乾杯!」
「うまい」
「これ焼きすぎだろ」
「お前ら聞いてやれよ」
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