ふたりのはなし。 | ナノ




大学の友達に同棲していると言ったら驚かれた。

えー、真琴非リア充そうなのにぃ。
ねー、彼氏いなさそうー。

って。

ちょっと酷くないですか?



見に行きたい、と言われたから彼は仕事あるから平日はいないよって伝えてまた驚かれる。

社会人!?と。



じゃあ休日に行こう、って話になってその会話は終わった。


そして、今日。
友達が遊びに来る日。

そういえばこっちに来てから友達招待するの初めてだなぁ!



駅の近くまで友達を迎えに行って、家まで案内することになった。

小さい可愛い子が莉奈。
お姉さん気質の子が佳織。



「へぇ、いいとこに住んでんね」

佳織が感心するような声を上げて住んでいるマンションを見上げた。
そうでしょう、外観だけじゃなくて中も広いのです!

自慢げに腰に手を当てて笑うと、莉奈が苦笑した。



オートロック式のマンションの入口に、見慣れた人物を見て「あ」と声を上げた。


「お兄ちゃん、晃くん、何でいるの?」


私の声に2人が振り返る。


「お兄さんと……え、彼氏?」

「違うよー、お兄ちゃんとその友達。彼氏さんのお友達だから」

「へぇ」

にっこり可愛く莉奈が笑う。



「おー、真琴お前……誘拐してきたのか」

「大学の友達ですけどぉ!?」

「あれだろお前『ぐへへへ、可愛い子』みたいな」


晃くんは私をなんだと思ってるんですかね?
おっさんボイス出せるからって中身までおっさんだと思ってるんですかね?


入口のロックを開いて部屋へと向かうためにエレベーターに乗り込んだ。

ていうか結局何しに来たんだろう。


お兄ちゃんを見ると、思いだしたように口を開いた。


「昨日、瑛太が暇なら遊ぶべーって」
「そうそう。そのくせlineの既読もつかねぇし電話にでねぇしクソかあいつ」

彼らの手には酒の缶が入ったスーパーの袋があった。
昼から飲む気かこの人たち。


たぶんえーちゃんはまだ寝てる。


自分の住む6階に到着して部屋へと向かった。



ただいま、と声をあげても返事はない。

まだ寝てるね。


「おい、瑛太は?」

「夢の中じゃないでしょうかー」


クソか、と晃くんは悪態をついた。

テーブルに袋を置いて、寝室へと向かっていく。


無理やり起こしたらまた不機嫌モードになるよ。



「……なんかごめんね、うるさい人達がいて」

「まぁ、私らも急に押しかけたようなもんだし」

佳織がからりと笑った。

いい友達で良かった。



寝室の方から重たいものが落ちたような音が響いて、静かになる。

ドアが開いて欠伸をしながら腰を押さえたえーちゃんが現れた。


「晃ひでぇ……痛いんだけど」

「呼び出しといて起きねぇのが悪ぃ」

「だからってベッドから落とすことないっしょ」


あぁ、落とされたんだ。
痛そうだな。えーちゃんのベッド何気に高さあるし。


眠たそうな表情を浮かべるえーちゃんは目をこすりながら莉奈と佳織を視界にいれた。

見たことのない人がいるからか、首を傾けて気の抜けた声をだした。


「うぇ?……真琴の友達ぃ?」

「うん、そう」

「お邪魔してますー」
「お邪魔してます」

「んー、おもてなしできなくてすんませんね……」


おかまいなく、と外面で佳織がえーちゃんに言った。
見事な営業スマイル。

えーちゃんはあくびをしながらキッチンの方へと向かった。
スウェットにシャツの寝間着スタイルから着替えようとすらしない、お客さんいるのに。
さすがえーちゃん。ゴーイングマイウェイ。


「おい、俺コーヒー」
「あー俺もー」

「うるせぇ自分で入れれ」


お客さん(友人)には容赦ないスタイル。


睡眠時間少ないわけじゃないからキレなかったね。


そう言えば北海道とこっちってコーヒーの発音違うんだっけ。
晃くんの発音に、不思議がっている莉奈を見ながらそんなことを考えた。



「……思ってたよりゆるい人だったぁ」

莉奈が首を傾げながらえーちゃんの行ったキッチンを見る。


「あーねぇ、エリートな社会人って言ってたからもっと真面目そうなの想像してた」

「時間とかに厳しかったりね」


時間に厳しかったらたぶん今起きたりしない。


2人の話を聞いていた晃くんが吹き出して、私を見る。


「おっ前さぁ、いい加減大げさに言うのやめれや」

「エリートじゃん。晃くんよりはエリートだよ確実に」

「何だっけぇ?イケメンで、ちょい天然で?可愛くて優しくて何でもできるエリート?」

楽しそうに笑う晃くん。

あぁ、神の成功作だっけぇ。と付け足してまた笑う。

確かに寝癖のつけたゆるゆるスタイルえーちゃんを見ると想像つかないかもしれないけれど!
しっかり仕事のできる人間なんだからね!



「さすがに言い過ぎだろ」

晃くんはけたけた笑う。
楽しそうですね、からかうとき。

お兄ちゃんは飲み物を取りにいきました。晃くんに命令されて。


戻ってきた2人がトレーに飲み物を乗せてきた。


「お茶でいい?」


「ありがとうございます」
「ありがとうございます!」

なんだろこれ、麦茶か。
えーちゃんからもらったお茶で喉を潤しながら莉奈、佳織と会話をする。



しばらく時間が経って、佳織が腕時計に目を向けた。

「じゃあそろそろ帰ろうかな」

「え、もう?」



佳織はにこりと笑って首を縦に振る。


「また遊びにくるね」

莉奈と佳織が立ち上がる。
私は見送るために2人を案内した。


「今日はありがとぉ」


佳織がバイバイといって歩き出した。
莉奈が可愛らしい笑顔を私に向ける。

こっそりと背伸びをして私に耳打ちした。



「今度お兄さんの連絡先教えて!」

「え?」

「じゃあねー!」



ぱたぱたと佳織を追いかけるように莉奈が走っていく。





―お友達と一緒―
(どうやらお友達は兄に一目惚れしたようです)




「ええええ、これ?これに?」
「兄を見ながら何を言ってるんだ真琴……これ扱いヤメテ」
「ゴミがどうした」
「晃お前酷いな!?」





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