あの言葉を言ってみましょう。
仕事から帰ってきたえーちゃんを出迎えた。
健気な新妻さながら可愛らしいエプロンをつけている。
「ごはんにする?お風呂にする?それともわ・た……」
「飯」
はーい即答。
めげないから。
真琴ちゃんめげません!
靴を脱いでいる彼をみつめて、再び口を開いた。
「お風呂にする?それともわt」
「飯ないの。じゃあ先に風呂」
「……せめて最後まで言わせてよ!」
酷い、酷いよ!遮るなんて!
せめて言わせてちょうだいよ、よければ少しでも良いから迷ったふりをしてよ!
疲れているからかめんどくさそうな表情を浮かべて、靴を脱いだえーちゃんは家に上がる。
頬を膨らませると苦笑して、頭を軽く叩いてきた。
スーツを脱ぐ動作がやたらとかっこいい。
「お風呂にして、ごはんにして、最後にお・ま・え」
さらりと、笑いながら。
えーちゃんはリビングに入って、スーツの上着をソファに投げてそういった。
「まじ!?」
「口悪い」
「まじでございます!?」
「まじでございますってなに、ふふ、うん」
私の言葉に笑いつつも頷く彼はお風呂へと向かっていった。
そうかぁ!明日仕事じゃないから拒否されなかった!いえい!
さっさとごはんを準備しよう!
─お決まりの言葉を伝えましょう─
(ただ抱き枕代わりにされたっていうオチだなんて……そんな)
「……おはよー」
「えーちゃんの天然生殺しぃ!!」
「……はぇ?」
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