無縁なジェラシー?1

「なぁ佐島、今日飲みにいかね?」



夕方、相模に声をかけられて首を傾ける。


「別にいいけど……」

「まじ?」

「雄大は?」

「や、だめ」



駄目ってどういうことよ。

取り消し不可、だなんて笑って相模はケータイをいじる。
取り消し不可?何か嫌な予感がする。



「女足りなくなってさぁ。助かるわ」



合コン。


「ねぇ、相模は私と雄大付き合ってんの知ってるよね?」

「知ってるけど、うっせぇんだよ男共が。それなりの用意しないとうっせぇの。佐島見映えはいいし」


は、って何よ。
失礼な。


「奢りだしいいだろ」


良くないんだけど。

私は呆れたように溜め息を吐き出した。



ただの飲み会なら良いけれど、合コンなぁ。


「浜崎が良いっつったら良いだろ?」



ねぇ、わかってんでしょ。
雄大がイエスマンだってこと。
わかってて言ってるよね?

うーわー、性格悪ぅ。

相模性格悪いわー。



私は立ち上がって雄大の元へ。



「雄大、今日私飲みに行ってくるね」

「あ、うん」


楽しんで来てね、なんて雄大は笑う。


相も変わらず仕事は減っていないようだ。

やってもやっても増えるからね、雄大の仕事。断らないから。



誰と行くかも聞いてくれないんだ、だなんて。

密かに口をとがらせて私は言葉を続ける。



「……合コン、行ってくるから」


「あぁ、そうなの」



あぁ、そうなの。
引き止めもしてくれないのね、馬鹿男。

雄大、君は馬鹿だ。
彼女なんだから引き止めて欲しいなー、なんて思ってるのにわかっちゃいない。


「飲みすぎないようにね」



雄大は眉を下げて笑い、パソコンへと視線を移した。


仕事の方が大切ですかそうですか!

じゃあいいです全力で合コン楽しんできますから!



雄大の椅子を軽く蹴って自分の位置へと戻る。



「どうだった?」

「いいってさ。行くわ」

「何怒ってんの佐島」


ニヤニヤしながら相模は私の顔を覗き込む。

くそ、この野郎。



仕事のために出していた荷物を片付けて、お疲れ様と言葉に出して相模と共に会社から出て行く。


会社からそう遠くない居酒屋で行われるらしい合コン。

既に人が集まっていて、店員に案内された個室に足を踏み入れると視線が私と相模に向けられた。



「お前らもう飲んでんの?早くね」

「お前が遅いんだろ貴久ぁ!その子誰よ!?」

「同僚」


相模は何事もないように座る。


年齢的にもそろそろ相手を見つけなければ、結婚が……という時期なのかもしれない。
……いや、私相手いるんだけど。



「ねぇ、名前なんてゆーのぉ?」


ヘロヘロして私の隣に座ったのは明るい茶髪の男。

既に酒臭い。
あまり近寄らないでもらいたい。



こういう軽そうというかなんていうか……苦手なんだよなぁ。

外見的には私も軽そうとか言われるけど。


当たり前のように腰に手ぇ回してくるし、スキンシップ激しいし。嫌なんだってそういうの。



私は人数合わせに来ただけなのでどうぞ皆さんで楽しんでください。



「……佐島明菜です」

「へー、明菜はさぁ、どんなタイプの男が好きなの?」



くそ、飲んでやる。食べてやる。

相模の金を食い荒らす勢いで召し上がってやる!



「……堅実な人かな?」

「えー、俺じゃん!」


どこがだよ。



他の男とも話ながら食事に集中する。


問答無用で二次会のカラオケにも参加させられて。

まぁその頃には酔っ払ってたから不快度はそんなに高くなかったけどね。




解散したのは12時を余裕に越えた時間。

わぁ、田舎への電車なんてないわ。最終過ぎてる。



隣を歩く相模が大丈夫か、なんて問いかけてくる。


「他の女の子送ってあげればいいのに」

「今日はハズレだな……まぁ、他は他で組み合わさってたし」

「ハズレとか。女の子もあんたがいてハズレだったでしょうよ、顔だけ男」

「辛辣だなぁ」


けらけら笑う相模。

結局あぶれもの同士で帰ってるわけです。
私?無愛想にしてたら後半相手されなくなりましたが何か?


相模はアピールされてたけど興味ない女の子は最後やんわり断って逃げた。



「相模の好みってどんなんよ。ボンキュッボンなネェチャン?」

「佐島相当酔ってね?大丈夫?……どっちかというと大和撫子のがいいわ」

「大和撫子」

「笑ってんじゃねぇよ軽女」


軽女じゃないし。

相模はケータイを覗きながら私をゆっくりと見た。



人通りは少ない。
私と同じように酔っ払っている仕事帰りの人間がちらほら歩いているのはわかる。



「佐島電車ある?」

「ないよぉないですよ」

「んじゃあ俺ん家でも来るか?」


あー、優しいわぁ相模。

私相手だし下心はないでしょーよ。



「……いい、ゆーだいはうす行くから」

「あいつ起きてるかぁ?」

「起こす」

「クズだな」


クズでもいいですぅ。

彼氏以外の所に泊まるなら彼氏を起こしますぅ。


明日休みだし雄大も許してくれると思う。



送るわ、と言われて否定もせずに一緒に雄大の家へ向かった。

私に何かあったら雄大に申し訳ないとかほにゃららら。
まぁ、一応送ってもらう。
人通り少ないし夜中怖いし。






コメント(0)


「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -