「愛してるよ」
カーテンのしまった部屋は薄暗い。
今日は休み。
休みだから雄大も行為に至ったんだろうけど。
視界に映っている雄大は目を閉じていた。
まだ夢の中か。
そっか、それなら。
朝起きたら彼女がコーヒーを、とか定番だろうか。
というかやってみたい。
基本的に雄大が先に起きてるからできたためしはないのだ。
これはチャンス。
ごそ、と布団の中で動くと雄大が動いた。
有無も言わさず私に抱きついて、背中に頭を擦り寄せてくる。
「まだ。まだ、寝よ……?」
眠たそうな声。
私は諦めて起きあがることを止めた。
「おはよ」
「うん……おはよ」
背中の向こうから聞こえる声。
ぐるりと体の方向を変えて、雄大の方を向いた。
閉じられた瞼にキスを落として、笑う。
ゆっくり目を開けた雄大とぱちりと目が合った。
「……大丈夫?しんどくない?」
「うんうん、大丈夫」
「本当?」
「本当だって」
心配性ですね、君は。
雄大からバードキスをされ、また目が合った。
困ったような表情だ。
君、好きだね。
そうやって眉を垂らしてへにゃって表情するの。
「……自制聞かなかった」
「案外激しかったよね」
「そういうこと言わない!」
むに、と雄大は私の頬を引っ張る。
本当のことを言っただけじゃないか。
この……ロールキャベツ男子め。
ん?ロールキャベツ男子とは違うかもしれない。
布団、暖かいから出たくないな。
じ、と雄大に見られて首を傾ける。
「どうしたの?」
「好きだなぁ、って思って」
突然の言葉に目を逸らす。
それを見て雄大は笑う。
楽しそうに、笑う。
「可愛いね、明菜ちゃん」
「そーいうのいりませーん」
「照れてるの?」
なんだこいつ!
くそう!
「何、突然」
「思ったら言うって、言ったじゃん」
言ったけど!
「……今日はどっか行こうかな!」
誤魔化すように言葉を吐く。
雄大は考えているのか、斜め上に視線を向けている。
「ケーキバイキングとか」
「あ、いいね」
甘いもの、食べたいね。
もう少し。
もう少しだけ、このままでいようか。
幸せだから、このままでいさせてね。
雄大にゆっくり抱きつくと、彼もまた抱きしめる手に力を込めた。
「愛してるよ」
君からそんな言葉を聞けるだけで、こんなに嬉しくて。
私も、愛してる。なんて。
笑って返事を渡せば雄大はくすぐったそうにへにゃりと笑った。
「ねぇ」
私の言葉に彼は首を傾けた。
「私も、ここに住んじゃいたいんだけど」
ほら、もう同棲しているようなもんでしょう。
そう言い訳のように言葉を重ねる。
どうでしょう?なんて問いかける。
さぁ、あなたはどんな答えをくれるの?
そんなの、わかりきっているようなものだけれど。
-fin-
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