家から。そういって佐々木先輩はグラウンドを離れていった。
わざわざ家まで。大変じゃないだろうか。
気を取られすぎた。盗み聞きしてる場合じゃない。私も練習しなきゃ。
相川先輩もグラウンドを離れていった。そんな状態じゃ練習できないと判断したのだろう。
しばらく、走って。
不意に髪をしばっていたゴムがぶちりと切れた。なんだこれ不吉。
予備、あるかな。一応部室に鞄はあるけれど、荷物は防犯も兼ねて部室に置いてあるけれど。
「枢木部長……髪ゴムとか部活に置いてあったりしますか?」
自分のがなかったら部活のを借りようとか思って聞いてみる。
「んー、もしかしたら部室にあるかも、ね」
わからないようで、曖昧に笑ってそう答えてくれた。
……髪縛らないで部活するのもやだしなぁ。一応あるか確認しに行ってみよう。
「ちょっと部室行ってきます」
「はいはい」
枢木先輩に見送られ、私は軽く走り出す。
グラウンドからそこまで遠くもない、部活棟の1室。陸上部の部室だ。
そこのドアに手をかけて、ゆっくりと開く。
そこにはぼうっと座っている相川先輩がいた。
あぁ、失礼しますくらい言えばよかった。私が口を開く前に先輩が気が付いて、こちらを向く。
私は目を見開く。
違う。
いつもの相川先輩と、違う。
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