フラッシュが放たれる。
 カメラが、撮影をする。

 わやわやと人混みの中で何事もないように、ナチュラルにポーズを決めていたのは相川先輩だった。
 部活は今日休みだけどさ。


 学校の中で撮影? ああいうのってセットでやるだけじゃないんだ。
 人混みの中にまどかを見つけ、彼女に近付いて話しかけた。


「……何あれ」
「雑誌の撮影だってぇ」
「それはわかるけど」
「相川先輩人気だから、特集組むんだってぇ、普段の彼! みたいなのー」


 中学から聞き慣れた気の抜けるふにゃふにゃした声。
 特集かぁ。やっぱり相川先輩はすごいんだなぁ。特集的に女性誌だろうか?

 女の子の黄色い声援が飛ぶ。
 男の人たちは面白半分で野次馬行動に出ているようだ。


 学校でカメラを前にしてポーズ決めてたら普段の彼もないと思う……など言ってはいけないのだろうか。
 移動と共に、野次馬をしている生徒たちも移動する。まどかが移動したので、私も真似して移動する。


 きらきら、きらきら。
 先輩が輝いて見える。

 ぱちり。目が合う。
 相川先輩と目が合った気がした。気のせいなのかもしれない。周りにいた女子も、まどかも、目が合ったと少し騒いでいた。





「お疲れ様でした!」


 しばらくして、撮影が終わる。
 私が見始めたのは終わりの方だったのか。

 カメラが片付けられていき、野次馬をしていた生徒たちも散り散りにその場を離れていく。
 相川先輩は鞄を背負って、帰るでもなく階段を上がっていった。



 すぐにジャージに着替えた姿で学校を出ていく。
 先輩が向かった先は、隣の運動場だ。あぁそうか、今日は部活がないから。


 カメラも何もかもいなくなったそこで、相川先輩は静かにバーを見据えた。
 跳ぼうとしているのか、走る体勢を取って静かに息を吐き出した。


「相川先輩」



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