「梓ちゃんおはよー!」
「あ、おはよう天音ちゃん」


 朝練があったのかな、天音ちゃんはいつも通りテンションを高めに教室に入ってくる。
 弓道部は弓道場で部活だから雨はあまり関係ないのかな。


 机の上から雑誌がなくなっていたからか不思議な顔をしていた少女に机に入れておいたことを告げる。
 ありがとう、なんて返事が可愛らしい笑顔と共に返ってきた。


「お礼に飴あげるねー! 何味がいい?」
「ありがとう、じゃあオレンジがいいな!」


 オレンジ色の包みを貰う。
 小さくて丸いそれを鞄の中にあったポーチの中に入れておいた。後で食べよう。

 天音ちゃんは担任がくるのも気にせずにピンク色の包みを開けて口に飴を放り込んだ。
 こらこら、もう朝のホームルームが始まっちゃいますよ。天音ちゃんは自分の席に戻って雑誌を手に取る。
 担任来たら没収されちゃうからね。

 案の定先生に見つかった天音ちゃんの雑誌は没収された。あーあ。

 1時間目は担任の授業で、気まぐれか先生は「席替えをするか」なんて呟いた。


 いつまでも出席番号順じゃつまらないし、とクラスメートは喜ぶ。
 そりゃ喜ぶよ。

 席替えって学生の内のわくわくする行事のひとつだし、何より授業が……みんな大嫌い数学の時間が潰れるわけですから。後ろの方の席になれたらラッキーだし。
 先生は裏紙で即席くじ引きを作って廊下側に座っている人、つまり出席番号の若い人からくじ引きを引いていく。

 私も引いて、くじ引きをゆっくりと開いた。


 38番。
 40人クラスでこの番号ということは、と黒板を眺める。


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