「尚志、桐谷さんいるけど」
「いいの、それにはバレたから」
「もはや人扱いじゃなくなってませんか」


 
 それ、って。物なの私。
 佐々木先輩がそうなの、と無感情に返した。


「朝のホームルームまで時間ありすぎ」


 暇だと言わんばかりの声。


「このままいても風邪引くから、着替えようか」

 保健室を出て、更衣室へと向かう。



「じゃあね、桐谷さん」


 2階で先輩たちと解散した。
 階ごとに更衣室は存在して、学年ごとに使う場所が違う。


 1年生は4階。
 あと2階分あがらなければならない。


 佐々木先輩は2年生だから3階
 だけど……朝練のときは2階で着替えているらしい。


「はい、ありがとうございました」
「雨降っちゃったから何もできてないけどね」


 佐々木先輩が困ったように、綺麗に笑った。
 はー、モテそうだな佐々木先輩。


「千穂、早く行こ」



 相川先輩は、相変わらず私に興味がないらしい。


「あんたは桐谷さんに謝りなさい。後輩をからかわないの」


 ……もういいです、佐々木先輩。


 えー、と不満そうに呟いた後、にっこり優しそうな王子様スマイルを作った。




「ごめんねぇ、梓ちゃん」




 そして王子様モードのまま歩いていく。
 佐々木先輩はじゃあねと私に再び告げて歩き出した。


 ……ていうか名前覚えてんじゃん先輩!


 さっき覚えてくれたのか、最初からわざと間違ってたのかは知らないけどさ。



 下の名前なのは……
「桐谷より梓の方が文字数少ないから」
 ……とか言いそうだ。


 更衣室に向かい私は制服に着替えて、少し雨による不快感を残したまま更衣室を後にした。




(act2. end)

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