「梓、帰ってきたの?」
お母さんの声が聞こえて、声を少し張って返事を返した。
「ちょっと走ってくるね」
「はいはい、夕飯までには帰ってきなさいよー」
少し走り込みをしよう。陸上部だし、基礎体力つけなきゃね。
最近は暑い、けど。夕方になったから学校にいるときよりも全然涼しい。
財布とミュージックプレイヤーだけ身につけて、家から再び離れていく。
とりあえず少し遠い公園まで走ろうではないか。
あそこなら休憩にもってこいだし、それまでは頑張って走ってみよう。
部活に力入れている学校なわけだし、それなりに成績も必要になってくるんだろう。足を引っ張るわけにはいかない。
大好きな音楽をかけて、自分のペースで走り出す。
体力がもつように
ゆっくり、ゆっくりと。
ペースを保ち数十分。
目的の公園にたどり着くことに見事成功した。
ふむふむ、私もやればできるものだ!
また同じくらいのペースで戻れば夕食の時間かな?
ベンチでひと休憩してから帰ろう。
そう思い公園の中に入るとベンチには先客がいた。
その人はベンチの背もたれにそるようにもたれかかって、遠くからでもわかるくらいに息を切らしていた……うわぁ、どれだけ疲れてるんだろうあの人。
隣のベンチに座ろうかな。
ベンチに座って一息つく……疲れるけどすっきりするなぁ、走るの。
赤い空を見上げてまったりしていると隣のベンチの人が勢い良く立ち上がった。
あれ、顔、見覚えある。
……というか。
その人は公園の水飲み場……私のベンチのすぐ側に歩いてきた。
子ども達の楽しげな声がこだまする。
そんな中で、あまり似合わない人が水飲み場で水を飲み始めた。
「……家はこの近くなんですか、相川先輩」
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