おおかみしょうねん | |
──その少年はいつも笑顔でした。 辛いことがあったって、泣くことはありませんでした。 「僕が泣くと君も泣いちゃうから」 少年は いつもそうやって、笑っていました。 そんな少年が泣いたのは、1度だけでした。 私が悪夢病に侵されて、死にそうになったときです。 少年は泣いて、泣いて、泣いて。 ただただ私を抱きしめていました。 絶対に死なせない、と。 私を救えるなら何でもする、と。 私に言い聞かせるように、神に懇願するように何度も何度も繰り返しました。 そうしたら、不思議なことに苦しさがすぅっと消え去っていきました。 代償のように、少年の瞳が赤くなったのです。 私の病気を奪った少年は狼になりました。他の狼とは違う、人を食べない狼です。 ← → back |