腕に噛みつかれたマツバは痛みに顔を歪ませた。
舌打ちをして、ユウトが狩猟銃をノアへと向ける。
「撃つな!!」
マツバがそう叫んで、ユウトを睨みつけた。
ユウトは驚いて銃口をノアに向けたまま止める。
リオが泣きながらノアに近寄って離れるように引っ張った。
やめて、やめてと言葉に出さず行動で示す。
「ノア」
マツバの呼びかけに、彼は反応を示さない。
何度だって、呼びかけて。
それでも、それでも。
彼は今、ただの“狼”なのだ。
マツバは今にも泣き出しそうな顔になる。
そんな顔で、笑って。笑いかけて。
「……それでもいいよ」
ノアを、噛まれていない方の手で撫でた。
「これでノアが許してくれるなら、いいよ」
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