ツインテールを揺らす少女、カグラは頬を膨らませてユウトを見上げた。


「……兄が迷惑を掛けました」


カグラがそう言ってマツバに頭を下げる。
お兄ちゃんなのか、そう言われてみれば似ている気がする。



ユウトは溜め息を吐いてカグラを撫でる。


「……俺はカグラを置いていかないよ」


小さく呟かれたそれがどういう意味なのか。
カグラが悲しい顔をしたのは何故か。


マツバは何となく察して首を傾けた。


きっと目の前の兄妹は親を人狼に殺されたのだ。
人狼を狩ろうと考える人間なぞ、大抵は恨みのある人間。さもなくば“ヒト”を殺すことに快楽を得る狂った人間くらいだろう。  


カグラはユウトを見て真面目な表情になる。


「人といるなら安全な人狼さんだよ」

カグラはユウトを説得するように言葉を告げる。
大方彼の行動は手に取るようにわかるのだろう。


ユウトは視線を下げて、ノアとリオの方へまた上げる。


「……安全、ねぇ」


彼は瞳を閉じて視線を外へと向けた。

窓から見える月は、赤々と地面を照らす。
狼の瞳は、月と同じ赤色に光った。



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