3-2:そばにいる[ 4/18 ]
「それでね、1人誰か呼んできてって」
あぁ、裕太の代わりね。
「ちな、私ちょっと行ってくるね」
「ん、オッケー! いってらっしゃい」
私は家庭科室を出て、衣装を作っているであろう自分たちの教室へ向かった。
「あ、華!」
由美が私に気付き、声をかける。
「華ちゃん、中井くんの代わり?」
「うん、裕太の代わりに来たよ」
「中井は不器用すぎるよな」とクラスに笑いが起きた。
そういえば手に絆創膏つけてたな、彼。
どじっこなの? 裕太。
こっちはこっちで楽しそうな雰囲気だなぁ。
「まぁ助かるよ。これとこれ縫い合わせてくれる?」
「はーい」
指示通り、素早くこなしていく。
時間がないし、できるだけ早くこなしていった方がいいよね。
裁縫って時間かかるし。
ミシンがないから全部手縫い。
しっかり縫わないとだめだね。
「華、家庭科得意なんだな」
「わぁっ! びっ……くりした!」
「びびりすぎだろ」
感心したようにのぞき込むのは玲。
集中しようとしてたときに話しかけられればそれは驚くでしょう。
邪魔をしないでいただきたい!
って、あれ?
智くんはもくもくと作業している。
すごい。真剣だ。
誰かが話しかけても反応しない。
ひたすらちくちくちくちく縫っている。
「みんな接客なんだね。玲、仕事は?」
この人堂々とサボっているのですか?