2-1:心の傷[ 4/12 ]

「なんで呼ばれたの?」
「1時間目とかのことだよ」


 あぁ、と裕太が言う。
 みんなには屋上で寝てしまった、とだけ告げた。

 少しだけ間を開けた後、怒られたの、だなんて裕太がけらけら笑った。


 私はさっき智くんに貰ったいちご牛乳を飲む。



「華ちゃん。飴食べる? 天野さんも、はい」
「ありがとう」
「中井くん、ありがとう」


 穏やかな休憩時間。そんな時だった。教室のドアが、大きな音を立てて開いた。


「溝渕ィ!」

 不良のような人たちがぞろぞろと。5人いる。


「……何アレ」
「玲ちんに殴られたか、彼女とられた先輩方じゃないかなぁ。今日は少ないね」


 裕太は気にせずにゲームを続ける。
 由美は少しビクついている。


 何人かは少し怖がっているが、他はそんなに気にしていないようだ。
 ……コレって日常茶飯事なの? 嫌だこんな日常茶飯事いりません、バイオレンス。

 教室が五月蠅いことに苛ついたのか、先輩の1人が大きな音を立てて壁を殴った。
 教室は一気に静まりかえる。


「溝渕はどこだっ!?」
「うるさいなぁ……いないのもわかんないのあの猿頭」


 知ってるわけないじゃん。と裕太は先輩に聞こえない程度の声で呟く。
 聞こえてしまったら面倒くさそうだしね。

 すごく、場の空気が悪い。とても居心地が悪い。


「誰かは知ってるだろ!」




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