2-1:心の傷[ 3/12 ]
あなたは私のお父さんじゃありません。
なんで真顔なの賢ちゃん顔面白いよ。
「“あみ”って言ってたから、彼女かなって。別に好きじゃないよ」
玲の「あみさん」への呼び掛けの声がすごく優しくって。
特別な女の人って感じがしたから。
あんな男にも大切って、わかるのかなって思っただけ。そう、ただそれだけなのです。
そう言うと賢ちゃんはキョトンとした。
「……あみィ?」
「うん」
あら、知っている風?
「亜実、ねぇ? 未練はねぇと思うが……」
賢ちゃんの最後の方の言葉は聞こえなかった。
お菓子をポリポリ食べながら賢ちゃんは笑う。
「そいつは彼女ではないな。昼飯邪魔して悪かった。もういいぞ」
じゃあ、なんだろうね。
知っているなら教えてくれてもいいじゃない。気になる。未練とか言ってるってことは元カノとかだろうか。
私は賢ちゃんの言葉を聞いて職員室から出た。
教室に走って戻ろう。
息が切れない程度に廊下を走っていく。廊下を走るなだなんて言葉は知りませんよ。
「華ちゃんおかえりー!」
「ただいまー」
ほとんどの人が昼ご飯を食べ終わったらしく、それぞれ好きなことをしている。
ゲームをやっていたり、漫画や雑誌を読んでいたり。
……持ってくるの禁止らしいけど。