2-1:心の傷[ 2/12 ]

「何処まで馬鹿なんだ……平川は」


 智くんがはぁ、と溜め息をつく。
 大声の必要はない、ということだろう。

 でも私には怒っているように聞こえました……



「……行ってきます」


 気が乗らないまま私は職員室に向かう。昼休みだから、廊下にはたくさんの人がいた。

「失礼します」

 職員室のドアを開けると賢ちゃんと視線が交わった。


「ん。こっち」

 賢ちゃんが手で合図をする。用意されていた椅子に座ると賢ちゃんが私を見てにこりと笑った。


「俺、なんて頼んだっけ?」
「玲を授業に参加させろ……」
「うん。それでなんで華も休んだの? どうしてそうなんの!?」


 あ、倍怒られたのかな?
 ごめんね賢ちゃん許して。


「つい寝ちゃって……」
「……はぁ。まぁ、華だから許すけど……」


 賢ちゃん、それは贔屓というやつです。
 贔屓、ダメ、絶対。

 されている人が言っちゃダメなのかもしれないけれど。


「……あ、そうだ。玲って彼女いるの?」

 幼なじみって言ってたから知ってるかな。
 幼なじみでも知らないことはあるか。


「え、なに? なんで急にそんな話? 玲が好きなのか? お父さんそんなの許しません!!」




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