2-1:心の傷[ 1/12 ]

 昼休み。
 ……結局私は3時間目の途中から授業を受けた。

 そして今、さきほど購買で買ってきたパンを食べている最中だ。


「……」
「……」
「……何?」


 昼休み現在、由美と裕太の2人とお昼ご飯を食べている。
 じぃっ、と2人に見られている……どうしたんだろう。


「華ちゃん……どうしてそんなに苛ついてる、の?」


 オドオドとしながら裕太が聞いてくる。


「苛ついてなんか……」

 いない。



 その言葉はのどの奥へと消え去ってしまった。

 そうだよ、どうして私が苛つかなきゃいけない?
 ……あんな奴のために!


 冗談だったのはわかる。問題なのはそのあとだ。

 ……抱きしめられたんだ。
 玲が好きでもない人にあんなことするのはよぉーくわかった!


 よく考えれば第一印象は「エロ王子」だし!?
 好きでもない人とキスとかそれ以上のことも普通にしてるわけだし!?


 最低な奴っ!


「なんか、ね? 中井くん……」
「さらに、いらつきが増した気がするよぉ……」


 2人の声なんて聞こえなかった。いや、聞こうともしていなかったのかもしれないね。



「華」



 後ろから呼びかけられる。

「……智くん」

 後ろにちょんと立っていた智くんに視線を移した。どうしたんだろう。


「間違って押したから、これやる」


 はい、と渡されたのは、いちご牛乳。智くんが持ってるの、なんか可愛いな。


「ありがとう!」

 落ち着いてお礼を言う。そう、落ち着こう。


 冷静を装ってストローに口をつけ、
《1年5組!加賀華ーっ! 今すぐ職員室、俺の所に来い!!》
 つけようと、したのに……

 大きな声の、放送。


「……アホ教師だ」

 アホ教師、もとい賢ちゃんの呼び出し。
 耳に響くよ……



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