5-1:真夜中学校[ 1/9 ]
「そうだ、肝試しをしよう!」
化学の時間、突然賢ちゃんは軽いノリで言いだした。
当然のように、生徒たちからは「はぁ?」とテンションの低い声が聞こえてくる。
「最近この学校で出るって噂あるんだよねー! 気にならね?」
「ならない」
いいから授業を進めてください。
教師の癖に賢ちゃんはみんなが今現在勉強に対して今までにないくらい意欲を出しているにも関わらず知らん顔して話を進めていく。
「明日、休みだし丁度良いな。よし、夜の9時に全員集合!」
みんな面倒くさい、とでも言うように嫌そうな顔をする。
賢ちゃんは子どもに負けないくらいぶすっと不満げな表情を浮かべてから、思いついたように意地悪く笑う。
「もし、来ないような奴がいれば化学の成績楽しみしとけよ?」
つまり、下げてやる、と。
そこで教師の権限使っちゃう? ていうかそういうのありなの?
当然のように、みんなからは大ブーイングが上がる。
ふざけんな、とか。
最悪、とか。
これでも嫌われない賢ちゃんがすごい。
「この教室の王様は俺だ!」と言う賢ちゃんの大胆発言と共に授業は終了し、クラス一同唖然としている。
「ったく、何考えてんだあの馬鹿は」
面倒だと言いたそうに玲は言う。
「最近霊が出るって言う噂、か。確かめてこいと理事長に言われて1人は嫌だから巻き込んだ。そんなところだろう」
「うわっ、それっぽい」
智くんの言葉に裕太が嫌そうな顔で賛同した。
確かに……そうなんだろうなぁ。
――
―
…
結局、午後9時。
無理矢理賢ちゃんに引っ張られて学校に着くと、いつものメンバー以外は誰1人として来ていやしなかった。
「はぁ? 天野、上原、川谷……だけ?」
賢ちゃんが3人を見て不満げにそう告げる。
「平川のわかりやすい嘘に誰が騙されるか、馬鹿が」