4-3:権利なんてないside智[ 1/4 ]
「加賀、一緒に遊びに行かないか?」
授業が終わった途端、川谷は立ち上がり華の前でこう言い放った。
その言葉を聞いてクラスの奴らは固まり、寮のメンバーはそれぞれの反応を起こす。
まるで見世物だ。人の視線がその場所に集まっている。
あくまでも冷静を装った溝渕が「こんなのをデートに誘っちゃうのか、委員長?」と言う。
……わかりやすいぞ、焦ってるって。
横を見ると、華は固まったままどうすればいいかわからないようだ。
「遊園地のチケットもらったから……」
川谷は照れくさそうに言う。
その言葉に中井は、はっと鼻で笑う。
「もらった? 自分で準備したのはバレバレだよ?? 僕の前でそーんなことするなんてすごいね?」
つまり、中井の好きな華を自分の目の前で誘うなんて調子乗るなよこの野郎。ってことだ。たぶん。
腹黒い中井は川谷の弱点でも探すつもりだろうか。
……正直、俺もいい気はしない。
川谷は溝渕と中井に怖がっていながらも「どう?」と華に聞く
「華! 駄目だぞ!? お父さん許しません!」
「誰がお父さん?」
華が少し呆れた顔で平川につっこむ。
少し黙っていた溝渕が「行ってくれば?」と笑って言う。
「へ?」
「華さぁ、そんなお誘い滅多にないんだからさー。俺たちと違ってモテないんだから、チャンスじゃねぇーのッ?」
その言葉に華はむっとした顔で
「あー、行く! 行きますとも! どうせ玲みたいにモテませんよーだ! 川谷くん、明日行く! 誘ってくれてありがとう!」
そう言った。
お互いで意地を張り合っている。馬鹿だな。
「本当? 良かった。」
川谷は安心したように言う。
華が教室を出て行った後、溝渕は中井と上原に叩かれていた。