4-2:俺はお前が、[ 8/8 ]
途切れている言葉は、切なく響く。
「もう大丈夫だろ……?」
そういって離れ、椅子に座る。顔は外に向かっていて、微塵と私を見ようともしていない。
あぁ、顔が真っ赤だ。きっと私も、真っ赤。
いつもの玲と同じとは、思えない。
「もう、人は好きにならないって……思ってたのにな」
どういう意味かはわからない玲の言葉を聞き流す。深く突っ込むことではないし、突っ込む余裕なんてない。
観覧車が一周し、観覧車から降りる。一周が、やけに長く感じた。
紅潮した頬も少しは元に戻っただろうか。
前を歩いてた玲が何かを思い出したように止まり、振り返った。
「……手」
「手?」
「手、繋ご? 暗いと足下危ない、し」
「……うん」
繋いだ手は、やっぱり温かかった。
ゆったりと出口に向かう。遊園地から出ると、寮の3人がいた……寮のみんなで来てたんだ。仲の良いことで。
ぱっと、気付かれる前に手が離れて、風の冷たさが手を襲う。
「華ちゃーん。大丈夫ー?」
「え? うん」
「……川谷に会って“華が攫われた”って慌ててたから、溝渕だって言っておいた。“なら大丈夫だな”って帰ってった」
あぁ、順平、ごめんね。
「華ー! 腹減った! 帰るぞ、今日は俺も手伝うから!」
「僕も手伝う!」
「ありがとう。裕太はいいよ……」
「どうして!?」
みんな寮に帰るため歩き出した。
私は立ち止まり、出口の近くで離された手を見つめる。
「……? 華? 帰るぞー」
「あ、うん!」
もし肯定して、幸せになれたのなら。私は失う恐怖におびえ続けるのかもしれない。
もし否定して、彼を突き放したのなら。そんなことは想像は出来ないけれど、とにかく悲しい思いをするのだろう。
もし例えば、この曖昧なままの関係を続けて、彼が離れていってしまうことがあれば。私はどんな感情を抱かなければならないのだろうか。
そんなのわからない。誰もかれも、私自身も到底わかりえもしない未来だ。
それなら、私は。
どの未来を選択するべきなのだろうか?
[next→権利なんてない]