3-5:全てが幸せな結末じゃない[ 5/9 ]



 わざとおどけてみせて、賢ちゃんに同意を求める。
 賢ちゃんならきっと笑って「そうだな」って言ってくれると思った。

 ……思ったのに。



「数年後でも、植物状態のまま起きてないんだぞ……起きるわけ、ないだろ」



 そういって賢ちゃんは立ち上がり、玄関に向かう。
 予想外の言葉に私は固まった。



 違う。
 そんな顔をして欲しかったんじゃない。
「そうだな」って、おかしそうに笑ってほしかったんだ。

 どうして、賢ちゃんが、そんな悲しそうな顔をするの?



「俺、ちょっと出かけてくる……帰り遅くなるかもしれないから、夕飯は冷蔵庫にでも入れといてくれると嬉しいわ」


 そういって、寮から出て行った。
 最近、本当に様子が変だ。
 だって前に、休日は寝るためにあるんだとか言ってたの。

 さっきまで用事がないような感じだったのに突然出かけるなんて……



「……私掃除でもするかなぁ……みんな、部屋掃除するからねー」



 心のどこかにある突っ掛った何かを見てみぬふりをするように、私は家事へと逃げる。



「あんがとー」
「どーも」
「俺の部屋は大丈夫だ、昨日自分で掃除した」


 掃除機を持って、掃除を始める。
 リビングが終わり、各部屋掃除をしようと賢ちゃんの部屋に入る。

 許可取ってないけど、いつも掃除してるからいいよね。掃除機をかけながら落ちている物を拾って棚に戻す。賢ちゃん、なんでも下に落とすんだから……床に物だらけだ。

 掃除機に1枚の紙が引っかかる。
 ひょいと拾うと、賢ちゃんの昔の写真だった。


「うわぁ! 高校生の賢ちゃん」


 ここら辺に、何枚も落ちている。
 気になったので、思わず見てしまった。




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