3-5:全てが幸せな結末じゃない[ 3/9 ]
「ただいまぁ」
「おかえりー! おもしろかった?」
みんなリビングでゆったりしている。全員集合!
「うん、すっごい感動した! みんなも見に行くべきだよ!」
鞄ををテーブルに置いて、あの感動を教える。ボキャブラリーのない私の言葉ではあまり伝わらないかもしれない。
裕太は「小説読んでみようかな」と言う。
「あ、ちょうど玲読んでる! 面白いよねっ!?」
玲がソファで寝転がりながら「紫音」を読んでいる。
玲が読んでるのも意外だ。恋愛ものとか読まなさそうなのに。
んー、と玲が言う。
「リアリティが足りない」
パラパラと玲は読み進める。
読むの早いなぁ……雑に読むのはやめなさい。
「え……? 小説の方表現少し下手なの?」
「いや、そんなことなかったぞ」
智くんは楽な格好に着替えてリビングに戻ってきた。
そうだよ。智くんが映画を見に行きたくなるほど素敵な本なんだから。
「そうかぁ? 小さい頃からずーっと大好きだった奴が事故って、この程度の悲しみかぁ?」