3-5:全てが幸せな結末じゃない[ 1/9 ]
「行ってきます!」
「行ってくる」
「行ってらっしゃーい」
裕太が玄関で可愛らしくぱたりぱたりと手を振った。
今日は、智くんと映画を見に行く。以前学校で話した、映画を見に行くという話だ。
最近、賢ちゃんの様子がおかしいのは心配だなぁ。元気ない賢ちゃんって珍しいし……
何かをしようにも何もしようがないから放っておいてはいるけど。
そうそう、見に行くのは“紫音”っていう映画。
私は本の方は読んでないけど、ベストセラーで映画化ってことでテレビでもよくCMをやってたから名前は知っている。
CMを見る限りではおもしろそうだったけど……どうだろうか?
好きな俳優さんも出てたし、楽しみだなぁ!
智くんと雑談をしながら映画館に向かう。
「学生2枚」
チケットを買って、見やすい位置であろう席に座る。
「智くん、恋愛の小説読んでるとは意外だったなぁー」
「普段はあまり読まないが、ベストセラーって書いてあったからとりあえず読んでみたら面白かった」
淡々とそう言って智くんは飲み物を口に運んだ。
それを見た私もストローを口元へと持って行ってみる。烏龍茶美味しい。
大きなブザーがなって映画の開始を告げる。
いくつか広告が流れてから映画が始まって、館内が静まる。
主人公は高校生の“圭”
幼なじみの女の子“遊里”と小さい頃に結婚を約束して、ずっと付き合い続けている少年だった。
もう1人の幼なじみ“宗助”と遊里をふざけて取り合ったりなどをして、平和で、幸せそうな生活。
私はその幸せそうな内容に思わず笑ってしまう。可愛らしいやりとりで。