side:春樹
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また、考えて考えて考えて。
馬鹿みたいに自分を追い詰めて。
自己嫌悪して。
子供みたいに泣き出すから。
「散歩に行こう」
そういって半ば無理やり刹那を外へと連れ出した。
特に行く宛もなく車椅子を押して町をぶらついた。
数年前からがらりと変わって平和になったこの街は、人で溢れかえっていて、賑わっていて。
声をかけられては挨拶をして、刹那に「お前は顔が広いな」と言葉を投げかけられる。
まぁ、お前も一部じゃ有名だけどな。
元兵士とか、そこら辺中心に。
荒々しい奴らは党首が“処分”したから、今の刹那を見て歩けないのか都合がいい、殺そう。なんて考える人間も到底いないだろ。
いたら俺がその前にそいつを殺すけどさ。
「刹那ぁ、どこいく?」
「……いつもんとこ」
また行くの?朝も行ったんじゃないのお前。
まぁいいけど。
車椅子を押して俺は刹那の“いつもんとこ”に向かった。
相変わらず寂しい、慰霊碑。
慰霊碑の前に置いてあった花を目にして刹那の方を向いた。
「あれお前置いたやつ?」
「あぁ、そうだが」
「あれもらっていい?」
「何でだよ」
まぁまぁ、どうせ枯れてしまうんだしいいじゃないか。
周りの原っぱからシロツメクサを摘みながら、編んでいく。
時折、綺麗な花束の花を交えながら、輪っこを作った。
「花冠」
作ったそれを目の前のそいつの頭に乗せる。
刹那は呆れたように、笑った。
「子供かよ」
「俺は大人ですぅ、子供じゃないですぅ」
俺の言葉に刹那がまた笑う。
幸せそうに、笑うから。
あぁ、今、幸せなんだなぁって。
思っちゃったりするわけ。
「平和だねぇ」
奇跡的に戦争を生き抜いてきた俺は、戦争の頃と今を比べては違いに浸り、平和に浸かる。
色が違うもん。
昔は灰色、今は緑。
荒廃した街と、緑のあるこの場所。
全然違う。
どすりと足元に重い何かがぶつかった。
なんだ、と視線を下げると尻餅をついた幼い少女が俺を見ていた。
うるうると瞳が潤んで──声を上げて泣き出す。
「……え!?」
わんわんと泣き続ける。
お、俺が悪いの!?
パパ、ママ。
繰り返すその言葉。
俺、俺、悪役じゃん!!
「どど、どうしよう刹那!」
「……俺に振るな。俺、子供は……苦手なんだよ」
まぁ子供に懐かれそうにはないですけどね!
しばらくおどおどしていると、足音が聞こえてくる。
この子の親だといいけれど。
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