満月の日は、物事を考えるのには向かないと誰かに聞いたことがある。
何でだっけか?
頭の中がグシャグシャになるから?
まあそれはさておき、まさに今、そんな感じなんだろうか。



「…は、」
「聞き返すなよ、だから一緒にこないかって言ったんだよ」



正直、何を言い出すんだと思った。でもその反面、その誘いにのってしまいたい感情が湧き出たことも事実だった。
否定は、しない。



「…やっぱ俺がいないと寂しいんですかあ?」
「馬ぁ鹿、調子出ねぇだけだよ」



ニヤニヤ笑ったら頭を小突かれた。痛い。



「いてぇ…愛しの後輩をもっと大事に」



と言ったところで口を口で塞がれてしまった。
不意打ちは止めてくれと言ったのに。(まぁ、南沢さんが従ってくれるなんて思ってないけど)



「…んむっ…っ…んぐ」
「…ふっ…」



畜生いつも余裕綽々なんてムカつく人だ。
深くないけど長い。つまり息が吸えない。
俺は眉間にシワを寄せて、南沢さんの肩に力を込めた。

そうするといつもは離してくれるのに、今は離す気配がない。
苦しい。
と思ったら離してくれた。けどまた口を塞がれた。
離してくれた意味がない。
何回かバードキス(というよりキスの雨だ)をくりかえしてまだ続ける気だったから、俺は隙を突いて南沢さんの口元を両手を塞いだ。



「み、なみ、沢さん!」
「…」



俺の頬は熱い。南沢さんは眉間にシワを寄せて俺を睨んでいた。
理由は分からない。



「俺、な、んかしました?」



呼吸がまだ安定しない。



「…止めろよ」
「は」
「さっきの作り笑い止めろ」
「…!」



しまった、気づかれた。
呼吸のリズムが拗れる。



「だっ、て」



どうしろと言うんだろう。



「南、沢さん、自分で決めたことは曲げないから説得なんて出来ないし、お、れ、だって一緒に、サッカーやりたかったけ、どもう転校しちゃって、好きだけど、南沢さん、俺らのサッカー嫌いみたい、だしどうしろってい、うんですか」



自然と俺の顔は俯いていた。こんな顔見られたくない。

すると突然温もりに包まれた。
嗚呼悲しいくらい温かい。



「悪い、言っといて難だけど俺もだよ、それ」

















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