狩屋のことをどれくらい知ってるのか。
と俺はフォークをくわえて思考を開始させた。何でって、何となく。
うーん。
手を広げて数えてみる。
背番号15番のDF。裏表激しい。髪の手入れはしてない。極度の甘党。何だかんだでサッカーが好き。最近は直ってきたけどまだ若干人間不信。ネーミングセンス皆無。玉ねぎは飴色になるまで炒めないと食べない。俗にいうツンデレ。好きなものは取っておく派。肉まんよりあんまんが好き。ケーキは断然ミルフィーユが大好き。苺が好き。キュウリ嫌い。悪戯好きで余計なことを言う。けど優しい奴。
それからー



「霧野先輩聞いてます?」



思考は狩屋の声によって遮られた。



「あー…えーっと…?」
「やっぱか〜…あーだあから、先輩のロールケーキ一口くださいっって言ったんです」



目の前の狩屋が唇を尖らせて、先ほども言ったであろう言葉を復唱した。(因みに狩屋にケーキ一口を要求なんてことはしない。前に要求したら凄く陰鬱に罵られた。)
あー拗ねてる。
俺は食べていたシンプルなロールケーキを一口大より大きめに切って、狩屋の口元へ持っていった。



「はい、あーん」
「あーん」



ロールケーキは狩屋の口内へ入っていった。
これで狩屋は今狩屋が食べてるやつと合わせて8種類のケーキを食べたことになる。よく食えるな、こんな細い体で。
ムグムグと咀嚼してる狩屋は、何だか小さい子供みたいに見えた。(まあ中学生も子供なんだけどさ)
頭をグリグリワシャワシャ撫でてやる。
案の定嫌がられた。



「やるなら抱き締めてくださいよ!」



棘のある口調だった。
ホント、我が儘な奴。



(まあ俺が甘やかしてるんだけどな)



そう思いながら、俺は狩屋を抱き締めた。
ふわりと石鹸の匂いが鼻孔をくすぐった。



「んー狩屋相変わらずいい匂いだなーよしよし」
「わー先輩気持ち悪」
「いーよ気持ち悪くても」



やれやれ、素直じゃないなあ。顔赤いくせに。
まあだからこそ偶にあるデレが際立って、美味しい感じになるんだよな。(何がって、ナニがだよ)



「ニヤニヤで顔面残念なんですけど」
「ふーん」
「てかもう良いんですけど。残りのシャルロット食べたいんですけど!」
「えー…菓子より俺だろ」
「菓子じゃないですよ!ケーキ!シャルロット!」



段々狩屋が腕の中でバタバタし始めた。そんなつもりじゃないんだろうけど、本気で嫌がられてるみたいで悲しくもなるよな。
だからちょっと抵抗。
俺は狩屋の顎を掴んで此方に顔を向けさせた。
鳩が豆鉄砲を食らった顔をしてた。そうそう、意外とこういうのに弱いんだよな。

カブリ。

というワケで俺は狩屋の唇に噛み付いた。
狩屋は常に甘い物を食べてるから口の中も常に甘い。おかげで俺はすっかり病みつきである。
嗚呼甘い。
舌を僅かに開いた唇の間に差し込んで絡めてみると、案外あっさり舌を絡め返してきた。



「…んっ、んんんー!」
「…っふ、」



糸を引きながら離してやると、狩屋は頬を上気させて息を荒くしていた。


「な、にする…」



狩屋が呟いたけど、ニコリと笑いかけて聞こえないフリをした。
俺は狩屋の足に手を伸ばして掴んで、爪先に唇を落とした。
ピンと、狩屋の足が強張った。



「先輩、さっきから何してんの」



声色からして、狩屋は心底驚いているみたいだった。あ、怯えも入ってるかな。
俺は今度はリップノイズを鳴らして爪先に口付けて、狩屋を見た。



「知ってるか。爪先へのキスは忠誠とか誓いの意味があるんだぜ」
「…はあ?」




「誓ってやるからもうちょっと優しくしてくれよ」



笑顔で言い放ってやったら、ボッと赤面してから俯きながら「…善処しないこともないです、けど…」と小さく言った。
そこを断言出来ないってのが狩屋らしかった。
照れちゃってさ。

















sugar crown

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