何というか、そんなことないというかしないというか。嗚呼そうだな、そんなこと思わないという方が正しいのかな。

今の状況を説明すると、此処は神童の家で神童の部屋。のソファの上に俺と神童が座って向かい合っている。以上。



「…。」
「…。」



神童は頬を朱くしてジッと俺を見つめていた。俺もジッと、神童を見つめ返す。チョコレートカラーが硝子みたいに、ビー玉みたいに光を反射させる。



「……」
「……」
「……」
「……」



何ともいえない沈黙が流れる。神童は物欲しそうな視線を寄越す。…仕方ない、優しい俺が妥協してやろうじゃないか。
俺は神童に向けて、両手を広げて言った。



「神童、いいよ、おいで」
「!」



ぱあぁあといった感じに神童が顔を輝かせた。それから待ての状態を解除された犬のように、嬉しそうに俺に抱きついてきた。いつものフィールドの凛々しい姿から一変、俺の前ではこんな感じにデレデレになるわけだ。ツンデレよりデレデレが好きな俺にとっては嬉しいことだと思う。俺の胸に顔を押し付けて、神童がすんすんと鼻を鳴らす。



「霧野、いー匂いだな」
「どーも」



幸せそうに神童が顔をすりすりしてきた。何だこの可愛い生き物。あ、神童か。
誰だ今、変態くさいって言ったの。違うぞ、神童は断じて違うぞ。神童は愛故にこういうことになったんだ、変態じゃない。
頭をわしゃわしゃ撫でてやると、気持ちよさそうにチョコレートカラーを細める。可愛い可愛い。と、ふいに唇が重ねられた。かなり短いものだったけど、俺としちゃこう、キュンとくるわけで。
やられっぱなしも難だからすぐ仕返しに深いやつを一つする。神童は息継ぎが下手だから直ぐに表情がとろけてくる。かーわいっ。



「…は、…はぁ…霧野、好き」
「うんうん、俺も好きだよ」



肩で息を続けて神童がふんわりと言葉を紡ぐ。



「あのな、俺霧野大好きだから、」
「うん」



神童の声を聞いていると花畑に全身を投げ出したような、そんな感覚に捕らわれる。神童は囁く、紡ぐ。俺はボンヤリと、聞く、聴く。



「霧野に何されたってどうされたって、俺はそれで構わないぞ」
「だってそれは、『施している』のも『加えている』のも、全部全部霧野なんだから。」
「道具でも性欲処理でも依存場所でも単なる形だけの居場所でも、何だっていいよ」
「愛したっていい。捨てたっていい。殴ったっていいよ。シたっていいよ。酷くしたっていい。それでもいい。それが霧野だから。」



なんて、計り知れない愛なんだろ。




そうそう。つまり何が『そうしない』だとか『そう思わない』だというのかというと、俺は断じて神童を殺したり殴ったりなんてしない。そう思って神童にすり寄る。ない、そんなことしないし、ない。


え?ああ、まあ、愛故にということはあるかもな。
紙一重なんだよな、そういうの。
















割り切れないだなんて口惜しい

坂上様Happy Birthday!
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