『それ』は、まるで硝子細工のように奇麗だった。その事実はきっと、これからも変わることない、ゆらぐことのないものなんだと直感できた。



「何を考えてるの?」



しなやかな白雪の手が、俺の両頬を包んだ。ひんやりと冷たい。ついついびくりと体を震わせてしまった。



「あ、ごめんね風丸君。冷たかったよね」
「いや、気にしないでくれ。全然構わないから」



俺がそう言うとしゅんとしていた照美の顔が安心したように綻んで、俺の額に自分の額を寄せた。



「照美、どうしたんだ?」
「……やっぱり、僕と君は違うんだな、と思って」



すりすりと、照美が更に擦りよる。俺は儚げな照美の頭を撫でて抱き締めた。よしよし。



「そんな悲しいこと言うなよ」
「ふふ、ごめんね。でもやっぱり認めざるおえないよ」



照美の視線が自分の下半身に向いた。そこにあるのは、『足』等ではない。


奇麗な『尾鰭』だった。




「僕は、ガニメデスの生まれ変わりとか何とかいわれて生まれた」
「…」
「水に晒されてないなら人の姿をしてるけどね、でもそれは形だけなんだ」
「…、」



ザパリ。彼の尾鰭が揺れて、水面に波紋を生み出す。キラキラと、鱗が光を跳ね返す。



「それでも、俺はお前が好きだよ」



断言した。不安そうなスカーレットが俺を見上げる。



「…うん、ありがとう」
「礼を言われるようなことじゃない」
「僕も風丸君が好きだよ」



ふわりと、水の中に引き込まれた。慌てない。
それからまたふわりと、水中でキスをされる。水圧で揺らいで散らばる照美の金髪が乱反射してるみたいだ。奇麗で、奇麗だった。俺は照美を抱き締める。それから体を離して、お互いの手を引いて水面から頭を出す。水飛沫が硝子玉のように光って跳ねる。



「ほら、見て風丸君」



はにかんで照美が空を指差した。夜空になりかけている空に、微かな光を放つ星の集まりがあった。ああ、あれは



「水瓶座か、」
「うん、霞みそうだけど」
「儚げで俺は好きだぜ」
「僕も」



俺は照美の奇麗な鱗が混じった白雪の腕に唇を寄せると、照美が俺の腕にキスをしてまた俺を水中に引き込んだ。


水中に揺らぐ照美はこれからも変わらず、奇麗なんだろうな。それは俺以外には隠れて見えないんだろうけど。
















硝子鱗の万華鏡

浪漫様に提出
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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