珍しいこともあるんだね。



金髪の彼を目にした瞬間に俺はそう言った。
今日は土砂降りの雨だ。雨といっても完全な雨じゃなくて、俗に言う天気雨とか狐の嫁入りとかって言われる奴だ。つまり降るときは凄く降る。要はタイミングさえ悪くなければ回避は可能。そんな不思議な雨を俺は窓から眺めていた。見ていて楽しいけど外出したいから止んでくれないかなと眺めていたら、インターフォンが鳴った。
おや、このタイミングに?
インターフォンを鳴らした相手は誰だか知らないが、ツイてなかったのには変わりないので少し同情した。うん、そんな日もあるよ。誰かさん。
取り敢えず俺は窓から覗き込んで、誰かさんが誰なのかを確認することにした。
…と、思ったけどチラッと一部を見ただけ直ぐに分かった。うん、あの金髪はなかなかいないよ。



「やあ、照美君」



俺は玄関の扉の横の窓から声を掛けてみた。照美君が少しぎょっとして此方を向いた。



「扉から顔出しなよ、ヒロト君」
「警戒してかからないとさ」



足早にフローリングを歩いて扉を開ける。それから冒頭の言葉を掛けた。



「珍しいこともあるんだね」



マジマジと彼を見つめる。見事にびしょ濡れだった。ホント珍しいな。照美君って凄く強運なのに。



「まあ、人生そういうこともあるさ」
「そうだね。あ、風邪ひくとマズいし上がりなよ」
「そのために来たって知ってるクセに」



あ、バレた?


照美君は丁寧にお邪魔しますとお辞儀をして扉を潜る。なんだかこっちが困ってしまう。お辞儀をするといつもは解けるように零れる金髪が、濡れている所為で重そうに乱雑に零れた。少しだけ残念だ。
俺はバスタオルを投げる。頭に掛かるように投げたつもりだったんだけど、此処でも照美君はツイてないらしく顔面に被さってしまった。あちゃー。
照美君が困ったように笑う。



「今日はとことんツイてないんだ」
「いつものツケが回ってきたんじゃない?」
「かもしれないな」



仕方ないなあと照美君が濡れた髪やらを拭き始めた。時々ちらりと覗くアンニュイな表情にドキリとする。ホント、彼って男なのかな。



「ん、何かな」



タオルを渡してきた照美君と目が合った。何か恥ずかしくなってきた。無性に。と、照美君が視線を俺の左斜め下にやった。



「雨をね」
「え」



照美君が真顔で呟いた。



「雨は嫌いだけどね、こうして君の匂いがするバスタオルを使えたり、君と一緒にいられたりするから」



ほんの少し赤くなった照美君の視線が、俺に戻された。



「嫌いじゃないんだ」



迷わず俺は照美君を抱き締めた。だって俺の中じゃその選択肢しか無かったんだ。
















突然の雨とバスタオル

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