某アニメのパロディ風味

















俺が何かを掴もうと、触れようとする。するとその何かは割れるか、脆く崩れるか、兎に角破壊されてしまうんだ。俺によって。俺はそういう性質だった。俺の手はどうしても人の心を具現化させて引っ張り出して破壊を生む。



「だけどよ、その破壊は『筋が通った』破壊じゃねえの」



ズルルとストローでアイスティーを吸いながら、パートナーの南沢さんが言った。騒がしい店内をBGMに俺はポカンとした。南沢さんにしてはやけに素直な言葉だったからだ。



「…珍し、南沢さんが素直だ」
「はあ?つか言葉に対しての感想を言えよ」
「いや、これが感想ですよ」
「はっ倒すぞ」
「公開プレイしたいんですか?」
「置き換えすんな。変な盛り方すんな。」
「あははっ冗談ですよ」



ちょっとふてくされたように南沢さんが足を組み直した。案外子供みたいな人だ。案外。見た目はこんなに色っぽいのに。ギャップという奴か。ああ納得。



「お前っていきなり重い議題投げておいて急に切り替わるよな。んで議題放置」
「そうでもしないと俺やってけませんもん」



ぼんやりとしたまま俺が手を前に翳すと、南沢さんが憂いたようにキャラメルの瞳を伏せた。紫の長い睫毛がキャラメルにかかる。貴方がそんな顔して、一体どうするというのだろう。俺は店内に掛けられた時計を一瞥する。



「大丈夫ですよ、俺逃げませんから。やり遂げますから。貴方も殺しません。殺させません、」
「…俺の命はとっくに霧野に預けてるからいい。ただな、お前なんか躊躇してないか」



南沢さんの瞳と俺の瞳がかち合う。ガラス玉とガラス玉がぶつかり合うようなイメージで、その状態は作り出された。俺は逸らさなかった。南沢さんも逸らさなかった。



「貴方が好きなんです」
「…!」
「俺は貴方を信じています。けど、律儀に自分を信じているかといえば、頷けません」
「霧野」
「俺は貴方を殺したくない。だから」



俺がそう言いかけて、向かい側のガラス窓が吹き出すように割れた。敵だ。敵、俺達の敵がやってきたのだ。バタバタと大人数の足音が蔓延って、俺達を囲んで銃器を向けた。外では戦車の気配。
俺は戦わなくてはいけない。闘わなくてはいけない。発火するように、俺は南沢さんを見た。彼も同じであったようだ。弾いたように南沢さんの胸部に手を翳すと、南沢さんが俺の空いている手を握って



「だったら、俺を守るために俺を使え」



と唇を動かした。口パクではあったけど、よく読み取れた。つっかえていた楔が外された。俺はそんな言葉を欲していたのか。ああ納得。そうしていると、案の定大人数の兵士達が突っ込んできた。
俺は躊躇なく南沢さんの胸部に触れた。コォンと、ガラスと金属がぶつかり合ったような音が鳴り響いた。触れ合った指と肌の狭間から、赤紫の四角い結晶が溢れ出た。同時に強風が吹き荒れて、兵士達が人形のように陣形を崩して転がっていった。その結晶にまみれるように、南沢さんの胸部からゆっくりと『剣』が引き抜かれていく。赤紫の刀身が反射して俺を映す。スカイブルーの瞳がチェリーレッドになって光っていた。強風に煽られる南沢さんが強く俺を見つめた。逸らしはしない。強風が和らいで、剣を抜き終えた。切っ先を自分の真正面を向ける。俺の手に南沢さんが流れるように手を添えた。同時に繋がれた手は離される。



「ざっと20人ってとこだな、後は戦車3台」
「一般人は」
「俺達に気付かれないよう上手く避難させてるからこっから半径2キロ以内なら大丈夫だろ」



そうですか、と相槌を打たなくても分かっているのが南沢さんで、俺は直ぐ剣を振り回して兵士達を容赦なく叩きのめす。そして南沢さんがバックステップで俺から離れて、俺は外の戦車を見据える。剣が結晶を散らしながら熱を帯びた。

ミサイルの発射口を向ける戦車に飛び出して剣を振り下ろした。戦車を真っ二つにした瞬間に、嗚呼俺はあの人が好きだから、守りたいから戦っているのかと場違いなことを考えた。

赤紫の結晶の剣がコォンと音を響かせた。
















蠍火に錆び逝く

蘭南の日のお祝い文章
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