*R15




















残念ながら、俺はその瞬間を捉えたわけではなかった。増してや掠ってもないし、視界にさえも入らなかった。俺としてはバッチリ見ておきたかった。何とも不謹慎な煩悩である。霧野には絶対に内緒だな。…あーあ、また内緒にしなくてはいけないことが出てしまった。(また、というのには追求しないで欲しい。俺が居たたまれなくなる。)

煩悩に浸っていた所為か全く自分の足が地面を踏んでいる感じがしなくて、気付けば俺は保健室のドアの前に棒立ちになっていた。無意識って恐ろしい。
俺はやっと輪郭が浮き出てきた意識でドアを開けた。



「…霧野」



声を掛けると、丸い椅子に座ったピンク色がゆっくりと此方を向いた。



「神童…」
「選択がバスケの奴から霧野が怪我したって聞いてさ」
「あ、…そっか、神童はテニスか。いや、大したことじゃないさ。」



カラカラと笑って、投げ出したようにしていた左脚をブラブラさせた。よくよく見てみると足首を少し捻ったようで、そこには少し紫を帯びた腫れが存在していた。俺は更に近寄る。



「…おいおい、そんなに見るなよ…何か恥ずかしいだろ」
「…何、想像したんだ?」
「………触るなよ、一応痛いんだから」
「(…話逸らしたな)」



少し垣間見えた加虐心を一度仕舞う。我慢。



「先生は?」
「何かいないっぽい」
「それでずっと此処でボーっとしてたのか」
「いや、歩いたらマズいかなーと」



悪戯っぽく霧野が肩を揺らす。と、同時に俺の心臓が鼓動を速めた。どくんどくんどくん。
仕方ないとしゃがみ込んでいた俺は立ち上がって救急箱を探す。霧野が重心を動かしたようで、丸椅子がキィと悲鳴を上げた。落ち着かなくなってきたらしい。



「霧野ーそうやって椅子から落ちないでくれよー」
「落ちないって」
「そうやってるから怪我するんだろうな…ほら、脚出せ」
「はいはい」



またしゃがみ込んで湿布を見せつけるようにピラピラと揺らすと、どうやら優越感を感じているらしい霧野は仕方なげに脚を差し出してきた。多分俺が下僕か何かに見えたんだろう。是非ともこの推測にはハズれて欲しいものだが。
また考え事をしているとはた、と気がついた。腫れぼったい足首に、ぱっくりと開いた傷があった。腫れた紫に隠れてよく認識出来なかったが血液が滲んでいる。それだけを説明すると何とも痛そうに思えるが、傷の規模が小さい所為か霧野は気にしていないようだ。そこからは無意識だった。



「霧野…此処切れてる」
「は、…ひっ!」



傷の辺りをなぞるように血液を舐めとると霧野の爪先がビクリと強張った。また舌をチロチロと動かしてみるとそれに合わせて小さく霧野の脚が跳ねた。段々気分が良くなってきた。



「…や、神童…舐めなくていいか、ら!…ん」
「消毒してあげてるんだから文句言うなよ」
「んん、嘘吐け…」



今度は足首から脹ら脛を伝うように舐めてみた。ビクンと一際大きく霧野が揺れた。またチロチロ舐めていると少し慣れてしまったらしく、強張りが小さくなった。対抗心で、舌全体で、唾液を絡ませるように舐めてみた。



「ひゃあっ、」
「霧野の脚しょっぱいな…」
「言う、…な!馬鹿…こ、の…ひぐぅっ、変態…ぃ」



ハーフパンツを捲って太腿に差し掛かると、霧野が今更俺の頭を押す。本当に今更だ。そうはいっても力はとても弱々しくて、抵抗出来る程の力が入らないらしい。仕舞い込んでいた加虐心が這い出てきた。



「馬鹿で結構」
「っ、ん、…んあぅううぅっ!?」



ドンドン気が高ぶってきて、遂にズボンの中心部の繋ぎ目の辺りをベロリと唾液を更に絡めるように濡らすように、抉るように舐めた。霧野が目を見開いて、何かに痺れたように甲高い声を上げた。と言っても細い声だった。でもそれがまた、俺の中の理性の糸に鋏を入れてきた。



「ま、さか…しんどう……はぁ…此処でヤる、とか、言わない…よ、な…?」



はあはあと熱い吐息を洩らしながら、霧野が不安そうに言った。潤むスカイブルーがこれまた不安げに揺れた。



「…逆に聞くよ、駄目か?」
「…あぅ、……此処、は…」



頬を紅潮させて、可愛らしく(きっと無意識だ)霧野がやんわりまごついた。つまり行為自体は、それ自体は、拒否されていない。なら、ならば。



「…ごめん、止められない」
「えっ…嘘っ…いや、……はぅ、うぐ、ひぃっ」



もう一度ズボンの繋ぎ目を舐めてから、熱っぽい頭の中をそのままに俺の人差し指と親指をズボンに差し入れた。ボロボロと羞恥から溢れる霧野の涙を舌で舐め上げて笑うと小さく言われた。



「…んっ、…こ、の…変態…」



少し不機嫌になって強引にズボンを下ろすと、ビクンと霧野の爪先が綺麗に揺れた。
足首の傷はすっかり血が止まっていた。














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