眠くて仕方がなかった。眠い眠い眠い。眠い目をもう何回擦ったのか分からない。数も数えられないくらいに眠かった。



「…狩屋…」
「……なぁに………」
「………」



猫みたいだと常々思っていた狩屋の目を擦る仕草が更に猫のようだった。あれだ、顔を洗っているような。
一瞬そんなことがよぎって一体彼に何と言おうとしたのか、内容が遠くにいってしまった。おい、戻ってこい。



「……つるぎくん、おれ、すごい……眠い…から………はやく、して」



とてもとても眠そうに狩屋が言った。と相対的に甘い声になって俺の耳と糸に絡んだ。閉じかけた瞼が急に開く。俺の意識を奪って攫おうとした睡魔の海の水が一気に空いた排水口を流れていった。一体何時の間にそんなものが空いたのやら。いや、俺が空けたんだ。恐らく。きゅぽんと間抜けな音を立て俺が引き抜いたんだ。



「狩屋」
「………ん、」
「興奮した」
「……………」



眠くて仕方ないようでとろんとした表情のまま固まった。いつもなら怒るか、喚くか。どっちかだ。睡魔とは人間の本質の働きまでも奪ってしまうから恐ろしい。今はまた別の話だが。



「……つるぎくん、」



スルリと自分の首に回ったしなやかで柔らかい両腕に驚いた。それから狩屋の猫目がじっと自分を見据えていたことにも。眠そうではあるが。



「…つるぎくん、」
「なんだ」



さっきよりもふわふわした口調で俺を呼んだ狩屋は、自分から呼んだ癖に涙目に欠伸をして口を開いて
その口が閉じる前にふう、とその息を吹き込まれた。
俺の顔に当たった息は散り散りになって周りをちょろちょろと散ったのだろう。余韻にぞわりとした。



「…狩屋?」
「かりやくんの、欠伸の…攻撃?とか、何とか」
「…え、」
「今…盛ってるつるぎくんの相手なんか、………できないから、それで、眠くなって…んで…おれと、いっしょにねむればいい……」



何だそれ可愛いな。
ああなんだ、それ。嗚呼、何だか眠たい気になった。
そんな俺を置いて狩屋は毛布の海に身の投げていた。















堕落するはサンタマリア
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