くらっぷ!
もし宜しければ。



貴方は何を見たいのだろう。何が見えているのだろう。何を見ているのだろう?



「何って…あれ、何だ?」
「ほら分からない」
「人間ってよく分からねえな」
「…そうですね」



人間って複雑なくせに単純だ。内部は内蔵やら細胞やらミトコンドリアだの複雑。神経系なんていい例だ。だけど思考は複雑そうなのに単純明確、心理学だとかいう学問で証明されてしまう。紙の上でこういった状況に陥るとこうやって動くなんて言われてしまう。それで完了。
まるでロボットの操作法みたいだ。



「まあ…人間って、そんなもんなのかもな」
「えっ」



南沢さんと考えていた事がシンクロしたらしい。
我ながら反応がオーバーになってしまったが、幸い気にされなかった。



「例えば、」



恋なんて凄い単純だ。
南沢さんがすり、と俺に身を寄せた。いつものあの甘えで違和感は感じない。強いて言うなら何で今?
コテンと頭を肩に乗せる南沢さんに重ねるように俺も頭を傾けた。コツンと頭蓋骨が軽くぶつかる。



「恋はスイッチさえ入れば簡単に落ちる」
「そうですね、それで決まってこう続くんですよね」



要はスイッチが問題なのだから『相手は誰でも構わない』って。
南沢さんが視界を遮断した。俺は目を逸らさずに彼を見つめる。女みたいに長い睫毛が咲く。南沢さんの目玉が、此方を窺う。
俺達は窺い合う。腹を探り合う。




「今更だけど、リアルって残酷だな」
「残酷ですよ」
「たったそれだけなのに男同士ってどうしてこうもなぁ」
「ねー」



リアルにナイフなんか突き刺しても意味など無いの。



「でもそれでも俺はあんたが好きです」
「…サンキュ」



リアルを『敵』と考えなければ、それでいい。
俺達は紙の上の誰かじゃないし。



「紙の上よりは、人間が良いな」



呟くと、南沢さんが「同じ事考えてた」と悪戯っぽく笑った。


倉間と南沢












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