「剣城の言葉は、本当に剣みたいだよ。」

力無く松風が言った。それから淡く、水彩絵の具を水でぼかしたように淡く、松風が笑う。どうして。
淡く笑みを崩さないまま、松風が自分の胸をさすった。

「痛い、んだ。凄く」
「……。」
「剣城のこと、好きだよ。大好き。でも、何でかな。好きって言われる度、胸が切り裂かれたようになるんだ」

俺の唇は動かなかった。何も紡ぎやしない。松風がヨロヨロフラフラ近寄ってきて、俺の胸板に倒れ込むようにしがみついた。

「でも、剣城に抱きついたり抱き締められたりすると落ち着くんだ」
「…松、風」
「剣城の心臓の音、凄く好きなんだ。俺の音と凄くシンクロして、心地いいんだ…」

ドクン、ドクン。心臓が浮かれたように跳ねるのとは裏腹に、頭は冷静だった。それは、それは、要は。




2012.03.18 (Sun) 14:05


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