逃げ場は、ない。前の、俺が走って歩いてきた道はとっくに塞がれていてどうしようもなかった。

「さあ、どうする?狩屋マサキ」
「…」

今ここで逃げれたとしてもきっとこの人は付いて来る。そういう存在なのがこの人だ。

「逃がしてくれるんですか」
「馬鹿言え。俺の目的の逆をしてどうするんだよ」
「…選択肢なんてくれやしないんだから」
「でも少し脚色しなくちゃ面白くないだろう」
「あんたの演劇のために俺を犠牲にしないでください」
「演劇なんかじゃない現実さ」
「……あんたの悪趣味な城になんて御免だ」

黙らせるようにスルリと霧野先輩の口が俺のを塞いだ。這いずる舌は何だか冷たいような気がする。逃げられないことなんて知ってたよ。馬鹿。




2013.01.03 (Thu) 13:23


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