「おい、」

ふらふらと空野が歩いていた。ふわふわでも表現に問題はないが、とにかく危なっかしいのだ。足取りが。決して体調不良からくるものではない。これが空野の歩みだ。一体全体何処を歩いているのだろう?

「空野、」
「あ、剣城」
「…お前は相変わらず危なっかしいな…」
「いつも言うねそれ。飽きないね」
「飽きるとかいう問題じゃないだろ」
「うん、いつも心配してくれてありがとう」
「どうも」

空野は泡だ。と思う。ふわふわと何処かへ漂って知らぬ間に消える。嗚呼これだから懲りずに俺は手を差し伸べる。甘やかす。こいつの為になってない。きっと。俺の意見だけれど。
そんなことを考えながらもすっかり送る気になっていた俺に空野はこう言う。

「私は大丈夫だから」
「そうして放っておいたら死にそうだ」
「うわ、縁起でもないなあ」
「…、」
「ああごめんね、からかっただけだから」

そのつるりとした硝子みたいに滑らかな笑顔に一層煽られる。

「それだ、その顔が死亡フラグみたいで嫌なんだ」
「ええ…」

だから送る、と理由を的確に述べてくるりと背を向けた。

「剣城って私のこと好きなんだね」
「…、」
「あ、怒った?」
「いや」
「あれ、肯定?」

どう答えるべきだろうか。伝えてもいい。が、そうすれば正に泡のようにこいつがパチンと、














人魚姫の成れの果て




2012.12.03 (Mon) 16:35


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